M&Aに伴い同族株主間が株式を譲渡する場合の株価

2013-06-30

M&Aの実行に伴って、複数のグループ会社の組織再編を行うケースが多く見られます。株式譲渡や事業譲渡もあれば、非適格の組織再編のケースもあります。いずれにせよ、同族株主の間で株式を譲渡する場合、その株価が問題となります。

第三者間で株式譲渡を行う場合は、「株式の時価」が取引価額となり、売主と買主の交渉により決定した金額が取引価額となります。そして、この場合の非上場株式の時価は、当事者間で決定した取引価額となります。

しかし、非上場株式には取引相場がなく客観的な時価が把握できないことに加えて、同族株主間ではそもそも価格交渉できないという問題点があります。このため、非上場株式の売買においては、相続税、法人税および所得税の計算上用いられる評価方法に基づいた株式評価を行なって取引価額を決定することが一般的です。

当事者が個人の場合、相続税評価額によって株式を評価します。

これに対して、当事者が「法人」の場合、法人税法における非上場株式の評価は、基本的には相続税評価を準用しながら、それに次の3つの条件を加味して株式評価を行います。

1. 株式を取得する法人および株式を売却する個人がいずれも「中心的な同族株主」に該当する場合は、会社規模は小会社(折衷割合0.5)として評価すること

2. 純資産価額方式による評価計算においては、会社所有の土地や上場株式の評価を時価によること

3. 純資産価額方式による評価計算においては、評価差額に対する法人税相当額の控除をしないこと

実務上は中心的な同族株主に該当するか否かに関係なくL=0.5、すなわち、類似業種比準価額×0.5 + 純資産価額×0.5 で計算します。

親族外事業承継の方法としてM&Aを活用する事例が増えていますが、M&A株価と税務上の株価は異なりますので、自社株評価を行う際にはその点を注意しなければなりません。

事業承継税制(中小企業経営承継円滑化法に基づく非上場株式の納税猶予制度)とは?

2013-06-30

事業承継税制とは何か?

事業承継税制とは、中小企業経営承継円滑化法に基づく非上場株式に係る贈与税及び相続税の納税猶予制度のことをいい、中小企業の後継者の方が、現オーナーから会社の非上場株式を承継する際に、相続税、贈与税が納税猶予される制度です(相続:80%分、贈与:100%分の納税猶予)。平成27年度税制改正で事業承継税制が拡充され、中小企業オーナーにとって利用しやすい制度となりました。 

非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例

後継者である受贈者が、贈与により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を親族(先代経営者)から全部又は一定以上取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき贈与税のうち、その株式等(発行済株式の3分の2まで)に対応する贈与税全額の納税が猶予されます。

【この特例を受けるための要件】

1 会社の主な要件:次の会社のいずれにも該当しないこと。
(1) 上場会社
(2) 中小企業者に該当しない会社(中小企業者の定義は末尾に記載)
(3) 風俗営業会社
(4) 資産管理会社
(5) 総収入金額がゼロの会社、従業員数がゼロの会社


後継者である受贈者の主な要件:贈与の時において、
(1) 会社の代表権を有していること
(2) (後継者の要件は無くなりました。親族外の後継者でも構いません。
(3) 20歳以上であること
(4) 役員等の就任から3年以上を経過していること
(5) 後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること


先代経営者である贈与者の主な要件
(1) 会社の代表権を有していたこと
(2) 贈与の時までに会社の代表取締役を退任すること(平取締役として留任することはできます。
(3) 贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと


4 担保提供
納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。ただし、特例の適用を受ける非上場株式等のすべてを担保として提供した場合には、納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます。株券を発行していなくても構いません。 


上場株式等についての相続税の納税猶予の特例

後継者が、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を先代経営者から取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、その株式等(発行済株式の3分の2まで)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。 

【この特例を受けるための要件】

1 会社の主な要件:次の会社のいずれにも該当しないこと。
(1) 上場会社
(2) 中小企業者に該当しない会社
(3) 風俗営業会社
(4) 資産管理会社
(5) 総収入金額がゼロの会社、従業員数がゼロの会社


2 後継者の主な要件
(1) 相続開始から5か月後において会社の代表権を有していること
(2) (後継者の要件は無くなりました。親族外の後継者でも構いません。
(3) 相続開始の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること


3 先代経営者である被相続人の主な要件
(1) 会社の代表権を有していたこと
(2) 相続開始直前において、被相続人及び被相続人と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと


4 担保提供
納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。ただし、特例の適用を受ける非上場株式等のすべてを担保として提供した場合には、納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます株券を発行していなくても構いません。 


 平成25年度改正の内容

平成21年に創設された事業承継税制ですが、5年間は厳しい『適用要件』を満たしている必要があったため、この『適用要件』の厳しさゆえに認定件数は平成24年9月までの4年間で549件(相続381件、贈与168件)に留まっていました。

すなわち、現行の事業承継税制の適用を受けるためには、相続開始前に一度、経済産業大臣の「確認」を受け、相続開始後に「認定」を受ける必要がありました。そして、5年間は「親族の後継者が代表を継続、先代経営者は役員を退任、雇用の8割以上を毎年維持」するなどの『適用要件』が義務づけられており、これが満たせなくなると納税猶予は打ち切りとなって猶予されていた税額に利子税も加えて納めなければならないという厳しいものでした。

そこで、平成27年から事業承継税制が拡充され、中小企業オーナーにとって利用しやすい制度となりました。

(1)事前確認の廃止
従来は、制度利用の前に経済産業大臣の事前確認を受ける必要がありましたが、平成25年4月から不要になり、事務手続きが簡素化されました。


(2)親族外承継の対象化
従来は、制度の対象となる後継者は現オーナーの親族に限定されていましたが、平成27年1月から親族外の人を後継者とすることも可能となり、幅広い人材から適任者を選ぶことができるようになりました。


(3)雇用8割維持要件の緩和
従来は、雇用の8割以上を5年間「毎年」維持することが要件として課されていましたが、平成27年1月から5年間「平均」維持するという要件に緩和されることとなり、景気悪化による一時的なリストラも実行可能となりました。


(4)納税猶予打ち切りリスクの緩和
従来は、要件を満たせず納税猶予打ち切りの際は、納税猶予額に加えて利子税の支払いが必要でしたが、平成27年1月からは利子税率が引下げられるとともに(現行2.1%→0.9%)、承継後5年超で5年間の利子税が免除されることとなりました。


また、従来は、相続・贈与から5年後以降は、「後継者の死亡又は会社倒産」により納税が免除されることとされていましたが、平成27年1月からは、「民事更生、会社更生等の事業再生の際にも、納税猶予額が一部免除されることとなりました。

(5)役員退任要件の緩和
従来は、現オーナーは、株式の贈与時に役員を退任することが必要でしたが、平成27年1月からは代表者を退任することのみ必要とされ、有給役員として残留することが可能となりました。これによって、現経営者の信用力を継続して活用することができます。


(6)債務控除方式の変更
従来は、相続時の猶予税額の計算で現オーナーの個人債務・葬式費用を「株式」から控除するため、猶予税額が少なく算出されていましたが、平成27年1月からは現オーナーの個人債務・葬式費用は「株式以外の相続財産」から控除されることとなり、納税猶予がフル活用されることとなりました。


中小企業者とは?

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業
その他   
資本金又は出資額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金又は出資額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金又は出資額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金又は出資額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

「高収益部門の後継者への移転方法~会社分割と事業譲渡」

2013-06-30

不動産相続と事業承継

業績好調の会社の株式をオーナー経営者が保有していると、その株式の評価額はどんどん上昇していくことになります。つまり、後継者の相続税支払い予想額は年々増えていくということです。高い利益水準に対して法人税を支払った上に、相続税負担も大きくなる状況ですから、株式承継対策が必要となります。

株式承継対策として、高収益部門を後継者に移転することが効果的です。すなわち、高収益部門を分社化して新会社を設立し、その経営を後継者に任せてしまいます。もちろん、後継者が未熟だというのであれば、オーナーが新会社の経営に関与しても構いません。ここでのポイントは、将来の収益力を先に後継者へ移転して、株価の上昇とそれに伴う相続税負担の増加を抑えることなのです。

後継者が自ら設立した新会社へ高収益部門を移転することになりますが、その際の組織再編スキームとして、事業譲渡会社分割(吸収分割)があります。この2つのスキームを比較してみましょう。

会社分割とは?

会社分割には吸収分割と新設分割の2つがあります。

吸収分割とは、分割法人がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割承継法人に承継させることをいい、新設法人とは、一又はニ以上の分割法人がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継することをいいます。会社分割を行う場合には、原則として、株主総会の特別決議による承認が必要となります。

分割法人は分割承継法人に事業を移転し、その対価として株式又は金銭その他の財産を取得することになります。ここにいう財産の種類は、典型的には、分割承継法人の株式、その子会社あるいは関連会社の株式又は社債などの有価証券が考えられるほか、現金での対価の交付も可能です。

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を譲渡し、これによって譲渡会社がその財産によって営んでいた営業活動の全部又は重要な一部を譲受人に引継がせ、譲渡会社がその限度に応じ法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うものをいいます。

債権債務の承継における違い

会社分割では、分割法人の権利義務は包括的に分割承継法人に承継されるため、契約上の地位は相手方の同意なしに承継されます。

これに対して、事業譲渡では、譲渡会社において個別に契約の相手方の同意を得る必要があります。例えば、売掛金の承継については債権譲渡の手続きが、買掛金の承継については債権者の承諾が必要となります。それゆえ、相手方が多数存在する場合には、かなりの時間と労力が必要となる場合があります。

民法に規定する債権譲渡の手続きとしては、譲渡会社から債務者に対し、債権譲渡の通知をするか、または、債務者が債権譲渡について承諾をする必要があります。この債権譲渡通知、承諾は、第三者への対抗要件として、確定日付ある証書によって行わなければならないことになっています。

債権者保護手続きにおける違い

会社分割では、分割法人の債権者のうち、会社分割実行後の分割法人に対して、債務の履行を請求できなくなる者は、意義を述べることができます。分割法人は、債権者が一定期間内(最低1ヶ月)に意義を述べることができることを官報で公告するとともに、各債権者に個別に催告しなければなりません(官報公告に加えて、日刊新聞紙への掲載又はホームページでの電子公告を行った場合は、個別催告が不要。)。

これに対して、事業譲渡では上述したように債権譲渡の手続きが必要となりますので、会社法に規定する債権者保護手続きは必要ありません。

労働者保護手続きにおける違い

会社分割では、個々に従業員の同意を得る必要はありませんが、労働承継法の適用によって、労働者との協議、労働者への事前通知(株主総会の2週間前まで)が必要となるとともに、労働者の異議申出が認められています。

これに対して、事業譲渡では、従業員の個別の同意が必要となり、労働承継法の適用はありません。従業員の意向を把握した上で、譲渡会社から譲受会社への承継方法(転籍、出向)、処遇、退職金の取扱いを決めることになります。

法人税、住民税及び事業税の取扱い

事業譲渡の場合、譲渡会社から譲受会社に譲渡した資産及び負債の譲渡価額と帳簿価額との差額について譲渡損益が発生します。すなわち、譲渡損益は法人税、住民税及び事業税の課税対象となります。

一方、譲受会社は資産及び負債を時価で取得するため、その対価が時価純資産価額を超える場合には「資産調整勘定」を認識することができ、資産調整勘定の償却を通じて、将来の課税所得を圧縮することができます。

これに対して、会社分割を行う場合、税制適格要件の判定を行わなければなりません。すなわち、適格分割に該当するか非適格分割に該当するかによって税務上の取扱いが大きく異なってきます。 適格分割に該当した場合には、分割承継法人は資産及び負債を「簿価」で受け入れることになりますが、非適格分割に該当した場合には、分割承継法人は資産及び負債を「時価」で受け入れることになります。

事業承継対策として会社分割を行う場合は、事業部の新設分割を行なって新会社の株式を後継者に譲渡する方法、後継者が設立する新会社に対して吸収分割を行なって対価として現金を支払う方法が考えられますが、いずれの方法を採用しても、ほとんどのケースにおいて非適格分割に該当することになります。なぜなら、税制適格要件を満たすためには、グループ内の適格分割か、共同事業を営むための適格分割に該当する必要がありますが、事業承継対策として会社分割を行う場合はいずれのケースにも該当しないからです。

会社分割が非適格分割に該当する場合には、分割法人の資産及び負債が「時価」で分割承継法人へ移転することになります。それゆえ、分割法人から分割承継法人に移転した資産及び負債の時価と帳簿価額との差額について譲渡損益が発生します。すなわち、譲渡損益は法人税、住民税及び事業税の課税対象となります。

一方、分割承継法人は資産及び負債を「時価」で取得するため、その対価が時価純資産価額を超える場合には「資産調整勘定」を認識することができ、資産調整勘定の償却を通じて、将来の課税所得を圧縮することができます。

消費税の取扱い

事業譲渡では、資産及び負債の移転に伴って消費税等の負担が発生します。これに対して、会社分割は課税対象外取引とされているため、消費税等の負担は発生しません。

借地権の問題

建物を後継者の会社へ移転し、土地を賃貸すると「借地権」の問題が生じます。もちろん、適正な地代を支払っていれば、このような問題は生じません。適正な地代とは、更地としての土地の時価又は公示価格もしくは相続税評価額の6%とされています。自社株の評価の際には、この借地権が法人の財産となりますが、土地の値上がり部分はオーナーの個人財産に加算されることがなくなります。法人の株主を後継者にしておくことが相続税対策として効果的です。

後継者,事業譲渡,相続対策

後継者への事業譲渡が相続対策として有効


まとめ

主要な相違点を比較しますと以下の通りとなります。
会社分割 事業譲渡
意思決定機関 (分割法人)株主総会の特別決議 (譲渡会社)株主総会の特別決議
(譲受会社)他社の営業全部の譲受けを行う場合は株主総会の特別決議が必要
債権債務の承継 相手方の同意は不要 相手方の同意が必要
債権者保護手続き 官報公告が必要(最低1ヶ月) 不要(個別同意が必要であるため)
労働者保護手続き 労働承継法の適用がある 労働承継法の適用はなく、個別に従業員の同意を得る
税務上の取扱い
(非適格再編の場合)
(分割法人)損益を認識
(分割承継法人)時価で受入れ、資産調整勘定を認識
(譲渡会社)損益を認識
(譲受会社)時価で受入れ、資産調整勘定を認識
商業登記 必要。分割法人は僅少だが、分割承継法人では増加資本金の1,000分の7を乗じた金額(ただし、ほとんどを資本準備金とすれば僅少) 不要
不動産取得税 発生するが、非課税要件を満たす場合には発生しない 発生する

事業承継のための自社株対策(4)「純資産価額を引下げる」

2013-06-29

事業承継対策として株価を引下げる手段を考えましょう。

純資産価額を引下げるための方法として、最も効果的な方法は、賃貸不動産の取得です。例えば、銀行借入れによって賃貸マンション、賃貸オフィス、商業ビルなどの収益物件を取得します。ただし、いつでも売却できるような優良な収益物件を取得し、再び現金化できるようにします。

賃貸不動産を取得した場合、土地は「貸家建付地」による評価、建物は「貸家」による評価となります。すなわち、貸家建付地の相続税評価額は時価の60%~70%程度(自用地の概ね8割)、貸家の相続税評価額は取得価額の30%~40%%程度(自己所有の7割)ですから、賃貸不動産の評価は、時価を大きく下回る相続税評価額となります。

弊社のアドバイス実績では、2億円の現預金を賃貸不動産の取得に充てて、相続税評価額を1億円まで下げた事例や、5億円の現預金を賃貸不動産の取得に充てて、相続税評価額を2億円まで下げた事例があります。このように優良な収益物件の時価と相続税評価額には相当大きな乖離があります

そこで、オーナー経営者が自社株を後継者に生前贈与又は売却する際に、賃貸不動産を活用した株価引下げを実行するのです。株価を引下げたタイミングで後継者に贈与等を実行し、その後、賃貸不動産を売却すれば、また現預金が戻ってきます

ただし、株式評価において、課税時期から3年以内に取得した不動産は「取得価額」等で評価しなければなりません。それゆえ、賃貸不動産を活用した株価引下げ対策を実行する場合には、生前贈与の最低3年前に賃貸不動産を取得する必要があることには注意しておきましょう。

事業承継のための自社株対策(3)「会社規模のランクアップ」

2013-06-29

事業承継対策として自社株評価を引下げる方法を考えてみましょう。

会社区分がランクアップすれば、通常は純資産価額よりも低い評価となる類似業種比準価額の適用割合が高くなるため有利です。中会社の大であれば、大会社を目指すべきでしょう。

その方法は、(1)従業員数を増やすこと、(2)売上高を増やすこと、(3)総資産を増やすことによります。ただし、総資産だけ増えても、従業員数や売上高が増えなければ区分変更は認められない仕組みとなっており、例えば、借入金と普通預金を両建て計上して総資産を増やしてもランクアップさせることはできません。

即効性のある方法は、M&Aによる事業譲受や合併でしょう。これによって従業員数や売上高を増やすことができれば、Lの割合(類似業種比準価額の適用割合)を上げることによって株価を引下げることができます。外部の会社とのM&Aでも構いませんが、複数のグループ会社を経営しているならば、合併によって単純に従業員数と総資産を増やすことによって、会社規模のランクアップを図ることができます。特に、合併する片方の会社が赤字ならば、利益を圧縮できることに加えて、純資産を引下げることもできますので、類似業種比準価額を引下げる効果が期待できます。

また、M&Aによって株価の低くなる別業種の事業を譲り受け、それによって類似業種比準価額の計算に適用する業種目(国税庁が公表)を変えることができれば、株価が下がることができる可能性があります。

事業承継のための自社株対策(2)「類似業種比準価額を引下げる」

2013-06-29

事業承継のために自社株評価を引下げる方法を検討してみましょう。

類似業種比準価額の3つの比準要素の配分比率は、配当1:利益3:純資産1となっていますから、この中で株価への影響が最も大きな要素は「利益金額」です。それゆえ、類似業種比準価額を引き下げるためには、利益(課税所得金額)を引き下げることが効果的です。

弊社のアドバイス実績では、前年度 3億円の利益を生前贈与を実行する事業年度 1億2千万円(前年比60%減)に減少させることによって、株価を@50,000円から@10,000円まで8割下げたケースがあります。

株価を下げたタイミングで相続時精算課税を適用すれば、贈与税を大幅に軽減(ゼロも可能)した状態で後継者へ株式を引継ぐことが可能となります。

含み損の実現

 例えば、遊休不動産などで含み損を抱えている場合は、売却して損失を顕在化させることによって利益金額を圧縮しましょう。3要素のうち利益金額には、不動産売却益等の臨時的な特別利益を加算する必要はありませんが、臨時的な損失は当然に差し引くことができます。もっとも、「グループ法人税制」の適用があるため、関連会社に飛ばして損失を吐き出すような手法は使うことができません。すなわち、グループ法人間で帳簿価額1千万円以上の資産等を譲渡する場合、譲渡損益を計上することはできません。

退職金の支給

オーナー経営者の退職時と併せて、後継者に株式を生前贈与するのであれば、役員退職金の支払いは利益の圧縮に効果的です。一般的に、法人税法では次のように計算式による金額を役員退職金として認めています。

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤務年数 × 功績倍率

すべての役職を退く場合はもちろん、常勤から非常勤などになる場合でも役員退職金の支給対象になります(この場合でも実態をともなっていることが必要です。たとえば退職後も引続き会社に出社して経営指揮をとって意思決定をしていたら、退職の事実はみとめられないでしょう。)。

役員退職金の支給があると、多額の損金が計上されますから利益を圧縮するとともに、多額の現金支出によって純資産も圧縮しますから、自社株の評価額は下がります。

生命保険の活用

生命保険を活用して利益を圧縮する手段もあります。会社が保険契約者及び受取人となり、役員が非保険者となる生命保険を使い、支払保険料を損金に算入します。また、相続時には、会社が受け取る保険金を死亡退職金に充当することによって、相続人の納税資金を確保することができます。その際、終身保険や長期平準定期保険、逓増定期保険、養老保険が使われます。

高収益部門の分離

 複数の事業を営む会社であれば、高収益部門を会社分割により別会社として独立させる手法が効果的です。これによって、既存会社には低収益部門が残るために利益を減少させることができます。

また、高収益部門が使用する固定資産(不動産)を賃貸すれば、純資産価額を下げることができます。すなわち、純資産価額の評価において、建物を貸家評価(概ね30%減少)、土地を貸家建付地評価(概ね20%減少)とすることができます。

さらに、分社型新設分割によって高収益部門を既存会社の子会社とすれば、将来的に株価が上昇しても、その上昇分に対する法人税等相当額42%を控除することが可能となり、既存会社の株価上昇を抑えることができます。

事業承継のための自社株対策(1)「特定の評価会社から一般の評価会社へ変更する」

2013-06-29

事業承継のために自社株評価の引き下げ方法を検討しましょう。

株式保有特定会社土地保有特定会社は、原則として純資産価額方式により評価することになりますので、類似業種比準価額方式の方が低い場合は、株式等や土地等の保有割合を下げることが必要です。

現在はグループ法人税制が導入されましたので、この適用対象である法人間では資産の譲渡損益は繰り延べになります。つまり、原則として税負担なしにグループ法人間で資産を移転させることが可能です(もちろん登録免許税などは必要です。)。そこで、グループ法人税制の対象会社を複数保有している場合、他のグループ会社に資産を移転することによって、株式等や土地等の保有割合を変えることを検討しましょう。まずはグループ法人間における資産の再配分を検討すべきなのです。

「株式保有特定会社」から外す

株式保有特定会社とは、総資産の価額のうちに占める株式等の価額の割合が一定以上の会社をいいます。吉野工業所事件を起因とする平成25年度の税制改正によって、大会社・中会社・小会社のいずれも50%が基準となりました。

この適用を外すには、不動産の取得によって株式の保有割合を下げる方法が効果的でしょう。

ここで提案したい方法は、オペレーティング・リースです。これは航空機、海上コンテナ、船舶等の大型リース資産へ匿名組合出資する方法です。オペレーティング・リースの特色は、リース収入は毎年定額ですが、リース資産は定額法によって減価償却し、かつ、リース期間が耐用年数を上回っていますから、リース期間の前半は必ず投資損益が赤字となり、投資家に損失が分配されることになっていることです。

オペレーティング・リース取引を実行することによって、「匿名組合出資金」を資産へ計上し、株式等の保有割合を下げることができます。また、オペレーティング・リースであれば、株式の保有割合を下げることと同時に、損失分配額の計上によって利益を圧縮し、類似業種比準価額を引下げることができます。さらに、損失分配額の未払金計上によって、純資産価額を引下げることもできます(大型の償却資産を取得した場合と同様の効果があります。)。ただし、匿名組合への出資の際に多額の現金支出を伴いますので、会社の資金繰りに支障をきたさないように注意する必要があるでしょう。なお、出資金と未払金(損失分配額の累計額)の評価については、従来は簿価評価を行うことが一般的でしたが、近年では損失分配を否認する事例が出てきているため、注意が必要です。

なお、財産評価基本通達189によれば、株式評価前に合理的理由も無く資産構成の変動があり、それが株式保有特定会社を外す目的だと認められた場合には、その変動がなかったものとして判定されると規定されているため、株式評価の直前に節税対策を行うことは避けたほうがよいでしょう。

「土地保有特定会社」から外す

土地保有特定会社とは、総資産の価額のうちに占める土地等の価額の割合が一定以上の会社をいいます。

この適用を外すには、所有土地の有効活用を兼ねて、建物を新築することが効果的です。また、上述したように、オペレーティング・リースによって、大型リース事業への匿名組合出資する方法も効果的でしょう。さらに、M&Aによって事業を買収し、不動産保有会社から事業会社へ転換してしまうことも選択肢の一つです。
もちろん、借入れを行なって預貯金や有価証券に運用すれば、土地の保有割合を簡単に低下させることができますが、租税回避行為とみなされる虞があるため止めておいたほうが無難でしょう。

余談ですが、巷で散見される例として、株式等や土地等を買い戻し条件付きで第三者に売却し、一時的に「未収金」という金銭債権に転化させて保有比率を下げる大胆な手法もありますが、明らかな租税回避行為ですので止めるべきでしょう。

「自社株評価で営業権の計上はROA10%以上」

2013-06-26

不動産相続と事業承継

 1. 営業権~「純資産価額」の悩みどころ

自社株(取引相場のない株式)は事業承継の主要なトピックの一つです。この自社株の評価方式の一つに「純資産価額方式」があります。

相続・贈与の際に適用される財産評価基本通達では、優良会社の「純資産価額」の計算に際しては、「営業権」(超過収益力を源泉とするプレミアム)を加味することが要請されています。ただでさえ高額となりがちな「純資産価額」に更なる株価上昇要因を考慮しなければならないのは、相続対策上、頭が痛いところです。

2. 営業権の評価方法(評基通165

財産評価基本通達の営業権は、次の算式により計算されます。

  【算式】 営業権の評価額 =
超過収益力(※) × 営業権の持続年数(10年)に応ずる基準年利率による複利年金現価率
(※) 超過収益力平均利益金額×0.5-標準企業者報酬-総資産価額×0.05
平均利益金額は所得金額に一定の調整をした3期の平均(前年所得を限度)
基準年利率(長期)は国税庁により公表され、平成24年12月現在の利率は年1.0%(複利年金現価率9.471)。平均利益の約9.5倍の資産を純資産価額に加味する必要があるということになります。

3. 一つの目安~「ROA 10%以上」の会社

この営業権評価額の算定には厳密な計算を要しますが、その計上可否の簡易な分岐点として、「ROA(総資産利益率)10%以上」が一つの目安となるかもしれません。

ROAは(営業利益÷総資産)で計算します。すなわち、左記の「超過収益力」の算式の「平均利益金額」に「総資産価額×10%」を代入すると、「平均利益金額×0.5」から「総資産価額×0.05」が控除されるため、超過利益金額はゼロ。したがって、「営業権」は計上されないということなのです(正式には、この総資産価額は「相続税評価額」で計算された価額となります)。

しかし優良企業が優良企業であり続けられる保証は何一つありません。もし該当するようであれば、早めの対策が肝心です。

事業承継のための「株式承継」とは

2013-06-24

事業承継対策のために、企業オーナーは、相続が発生する前に贈与や売却などで自己株の数を減らしていかなければいけません。贈与や売却は予め実行時期を決めることができます。これはいつ起きるかわからない相続と異なる点です。実行時期が決まっていれば、様々な株価引下げ対策を講じることができるのです。

子供を後継者と決めて、親族内で自社株の全て(発行済普通株式100%)を承継して引退する単純なケースを考えてみましょう。以下の5つの方式があります。

(1)贈与(暦年課税)
株式を贈与し、暦年課税方式により贈与税申告を行います。
贈与税の税率は他の国税に比べても非常に高いものです。株式の評価額次第では、子供に多額の贈与税負担が生じてしまうおそれがあります。この多額の贈与税を支払うことができないために、暦年贈与が採用されないケースが多くみられます。

(2)贈与(相続時精算課税)
株式を贈与し、相続時精算課税方式により贈与税申告を行います(税率は2,500万円の特別控除を差し引いた残額に対して一律20%。)。
この方式によれば、当面の税負担は暦年課税方式よりも軽くなります。しかし、相続発生時に精算しなくてはなりません(相続財産に加算して、贈与税を控除します。)。
最終的に精算されるものですが、株価を贈与時の評価額に固定することができ、株価上昇時には税負担の増加を抑えることができます。
引退する事業年度に一時的に株価を引き下げて、株式を一気にまとめて贈与することが効果的でしょう。

(3)贈与(事業承継税制)
株式を贈与し、贈与税(相続税)の納税猶予制度の適用を受けます。これにより贈与税は基本的にゼロとなります。
しかし、子供は第三者にM&Aで株式を売却しようとする場合や、廃業して会社を解散しようとする場合など一定の事由が発生すると、贈与税の一括納付が必要となります(利子税も課されます。)。
それゆえ、事実上、子供は死ぬまで会社経営を続けなくてはいけなくなります
また、納税猶予されるのは発行済株式の3分の2が限度ですので、残りの3分の1は他の方法を採らなければなりません。

(4)株式譲渡
後継者が出資する資産管理会社(又は後継者個人)に株式を売却します。例えば、後継者である子供が資産管理会社を設立し、銀行借入れで自社株を時価(=相続税評価額)で買取ります。オーナーには譲渡所得の20%の所得税が課されますが、後継者には贈与税は課されません。また、贈与の場合と異なり、相続時に遺留分の制約を受けることもありません。
しかし、オーナーに多額の現金が入るため、相続財産を減らすことができず、相続税対策としての効果はありません。また、後継者の資産管理会社は、自社株から得られる収益(配当金など)で銀行借入金を返済しますので、会社の収益性を維持しなければなりません。

(5)相続
死ぬまで何もしません。

以上、まとめると以下の表のようになります。

株式承継対策 長所 短所
株式贈与
(暦年課税)
1回で完結する。 贈与税負担が重い。
株式贈与
(相続時精算課税)
株価の上昇を止められる。
当面の税負担が少ない。
相続時に精算が必要。
株式贈与
(事業承継税制)
贈与税負担がほとんどない。 贈与後の機動性に欠く。
株式譲渡 オーナーに老後の生活資金が入る。 オーナーの相続財産が減らない。
 

M&Aで会社売却した後、多額の金融資産をどうするか?

2013-06-24

M&Aで会社を売却したオーナー経営者は、その売却代金として多額の現金を受け取ります。受け取った現金は預金として所有してもよいですが、一般的には金融機関を通じて金融資産を購入し運用することになります。つまり、M&Aを通じて、企業オーナーは金融資産家へ転身するということです。

金融資産家の相続対策は、「不動産投資」と「贈与」です。

まず、相続・贈与における相続税評価を整理してみましょう。保有する財産のポートフォリオを最適化という観点からは、相続税評価の低い資産に組み替えることによって税負担を軽減することができます。

現金・預貯金 額面そのまま
土地(自用地)
(更地、自宅の敷地)
路線価×調整率×地積
(路線価は公示価格の約80%
 土地(貸家建付地)
(アパート・マンションの敷地)
自用地の評価×(1-借地権割合×30%
(借地権割合は60%~70%の地域が多い) 
 建物(自宅) 固定資産税評価額
(固定資産税評価額は建築価格の50%~70%程度) 
 建物(貸家)  固定資産税評価額×(1-30%

相続対策として、銀行から資金を借入れてアパートやマンションを建てることが効果的です。以下、簡単な数値例で説明いたします。


例えば、個人で1億5千万の借入れをして、自己資金1億円と合わせて2.5億円のアパート(建物1億円、土地1億5千万円)を取得したとしましょう。

この場合、アパート建物は上記の表の通り「貸家」ですから、相続税評価は、固定資産税評価額×(1-30%)となります。すなわち、建築価格1億円×50%×(1-30%)=約3,500万円です。時価の35%程度まで評価を下げることができました。

また、アパート土地は「貸家建付地」ですから、相続税評価は、自用地の評価×(1-借地権割合×30%)となります。すなわち、公示価格(=時価)1億5千万円×80%×(1-60%×30%)=9,600万円です。時価の64%程度まで評価を下げることができました。

そうしますと、純資産価額は、3,500万円+9,600万円-1億5千万円=ゼロ(マイナスの場合はゼロ)となります。
 借金してアパートを建てる!
 科目 時価
(取得価額) 
相続税評価   
 アパート建物  1億円   3,500万円  貸家 
 アパート土地  1億5千万円   9,600万円   貸家建付地
 銀行借入金  ▲1億5千万円  ▲1億5千万円   
 純資産価額  1億円   ゼロ   節税に成功

このように、不動産と借入金の評価方法は相違しています。すなわち、アパート・マンション建築については、時価と相続税評価にズレ(時価>相続税評価)があるのに対して、借入金は時価と相続税評価が一致(時価=相続税評価)しています。そこで、このズレを利用して相続税評価を引き下げるのです。


近年、M&Aした後の資産家がタワーマンションを購入する事例が増えています。事業承継対策が終わったら、その次に相続対策が待っていることを忘れてはなりません。

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了(経営学及び会計学専攻)
税理士、公認会計士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員

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