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経営者に役立つ企業経営のノウハウや、事業承継の最新情報を分かりやすく解説します。

親族内事業承継の方法

事業承継は大別して、親族内の事業承継(相続)と親族外の事業承継(MBO、M&A)があります。今回は親族内に焦点を当てましょう。

親族内の事業承継を行うためには、後継者へ自社株や事業用資産を移転する必要があります。これには、以下の3つの方法があります。

後継者に対する自社株の売却

売買による承継は、現経営者の保有する自社株や事業用資産について、現経営者の生前に、売買によって後継者へ移転させる方法です。適正な対価を支払って資産を移転させる方法ですので、他の相続人から留分を主張されるおそれはなく後継者の地位が安定します。

しかし、後継者は資産の買取りに必要な対価として多額の対価を支払わなければなりません。また、現経営者は保有する自社株が減った代わりに対価としての現金を取得することになりますので、相続財産を減らすことができません。

現経営者から後継者への売買によって、現経営者に資産の譲渡益が発生する場合がありますが、その場合は譲渡益に対して所得税が課税されます。譲渡所得に対する税率は20%(所得税15%、住民税5%)です。

後継者への売却によって譲渡益が計上される場合には、他の含み損のある株式の譲渡損を実現させることによって、同一年度で「損益通算」を図るとよいでしょう。

なお、後継者への株式売却が時価に比べて著しく低い価格でなされた場合、株式の時価と後継者が負担した対価との差額分については、後継者が贈与を受けたものみなされ、贈与税が課されるため、注意が必要です。

後継者に対する自社株の生前贈与

生前贈与による承継は、現経営者の保有する自社株や事業用資産について、現経営者の生前に、贈与によって後継者へ移転させる方法です。現経営者の生前のうちに早くから企業経営に対して影響を持つことができます。また、後継者は自社株の取得に対価を支払う必要はありません

しかし、暦年贈与の場合、年間110万円を超える部分には贈与税を納付する必要が生じます。また、生前贈与によれば、相続時に他の相続人から遺留分を主張されるおそれがあり、後継者の地位はやや不安定となります。遺留分を侵害する生前贈与は効力を否定されてしまうのです。

遺留分の主張を回避する方法としては、相続人に遺留分を事前に放棄する手続きを取ってもらうことや、経営承継円滑化法の除外合意を活用することが考えられます。


なお、口約束だけで贈与を行い、証拠が何もない場合、生前贈与が否定されてしまうおそれがあります。そこで、正式な贈与契約書を作成することや、基礎控除額を僅かに超える贈与を行なって後継者が贈与税の申告、納税を行なっておくことなどの方法で証拠を残しておくほうが安全でしょう。

自社株の評価額が今後上昇する見込みがある場合は、相続時精算課税制度を利用して後継者に対して自社株を贈与することにより、大幅な節税が可能になる場合があります。

後継者に対する自社株の相続

相続による事業承継は、現経営者の保有する自社株や事業用資産について、現経営者の死亡時に、相続によって後継者へ移転させる方法です。後継者は自社株取得のための対価を支払う必要はありませんし、相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人数ですから、贈与税よりも税負担は軽いものとなります。

しかし、相続人が複数いるにもかかわらず、現経営者が遺言を残さずに死亡した場合は、自社株や事業用資産の取得のために遺産分割協議を経なければならず、後継者の地位は極めて不安定なものとなります。すなわち、相続が発生すると、自社株が全相続人の共有となり、各相続人は自由に株式を処分することができなくなります。また、たとえ遺言書が残されていた場合であっても、他の相続人から遺留分を主張されるおそれがあり、後継者の地位は不安定になります。


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一橋大学大学院商学研究科修士課程修了(経営学及び会計学専攻)、監査法人、投資銀行にて多数の事業承継を指導
公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。

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