医療法人の事業承継とM&A

2013-09-25

近年、病院をはじめとする医療機関のM&Aが増加しています。

売り手は後継者不在や将来の経営に対する不安から、買い手は規模拡大による経済的メリット追求や地域医療計画等により病床を獲得することが困難なエリアへの展開を狙ってM&Aを決断するケースが多くみられます。

医療機関のM&Aを理解するためには、そもそも株式会社と異なる医療法人という制度の理解が不可欠です。

(1)医療法人制度の概要

A. 医療法人とは

病院には、個人の開業医が運営するケースと法人の形態で運営するケースがありますが、法人形態をとっているのが医療法人となります。 医療法人は、医療法に基づいて設立されるため、会社法に基づく株式会社と比べて、様々な制度が異なっています。

なお、医療法による区分によると、ベッド数が20床以上のものを病院、それ未満であれば診療所と区別されています。  

B. 医療法人の特徴

イ)非営利性が徹底され、営利目的の病院等の開設は許可されず、出資者に対する配当は禁止されています。「出資持分」という考え方は医療法人の非営利性に反するという見解により、現在では出資持分のある医療法人を設立することはできません(経過措置あり。)。

ロ)設立には都道府県知事の認可が必要です。

ハ)なお、医療法人総数のうち、財団は0.8%、社団は99.2%であり、ほとんどの医療法人は社団となっています(平成23年3月31日現在厚生労働省データ)。

C. 医療法人の類型と出資持分の有無

平成19年4月の第5次医療法改正により医療法人制度は、いわゆる「地上2階、地下1階の制度」となりました。この改正以降は非営利性の観点から出資持分に対する財産権を認めず、出資持分の定めのある医療法人を設立することはできないこととなりました

しかしながら、社団である医療法人のうち持分の定めのあるものが依然として約9割を占めているというデータがあります(平成23年3月31日現在)。医療法人M&Aについても、対象法人が持分の定めのある社団法人であるケースが最も多いものと想定されます。

イ)出資持分の定めあり

医療法人制度の「地下1階」に相当する法人です。旧制度下の法人制度のため現在は新規設立できませんが、既存の法人については当分の間存続が認められています。 出資者に財産権(退社時における持分の払い戻し請求権等)が認められている経過措置型医療法人と、持分の払戻等については払込出資額を限度とする出資額限度法人があります。

ロ)出資持分の定めなし

「地上1階」「地上2階」に相当する法人です。活動の原資となる資金を基金(返還義務のある拠出)という形で調達する基金拠出型法人と、一般の持分なし社団があります。その中でも、特に公共性の高い社会医療法人が「地上2階」にあたります。

D. 医療法人の意思決定機関

社団医療法人の場合は「社員総会」が意思決定機関、「理事会」が職務執行機関という位置付けになっています。なお、社員、理事とも主体になれるのは個人のみです。 出資持分と社員権がリンクしていない点など、医療法人M&Aにおいては非常に重要なポイントです。よって、M&Aの条件に経営陣の退社・入社を入れ込むことは必須となります。

イ)社員総会と社員

社員総会は構成員である社員により組織される意思決定機関です。医療法人においては一社員一議決権となっており、出資持分の多寡と議決権数は関係がありません。 すなわち、株式会社と異なり、持分のある医療法人であったとしても出資持分を増やして議決権を押さえるといったことはできません。 社員が出資持分を持つかどうかは医療法人の定款で決まるため、全く持分の無い方が社員となっていることもあり得ます。

ロ)理事会

医療法人は、理事を3人以上置かなければなりません。理事は、理事会という機関で医療法人の職務執行権限を持つこととなります。なお、理事のうち1名を理事長として選出する必要があります。理事長は原則として医師である必要があります、都道府県知事の認可を受けた場合に限り例外として非医師であっても選出可能です。

E. 医療法人が行うことのできる業務(介護との関連)

医療法により、医療法人が行うことができる業務は「病院」「診療所」「介護老人保健施設の運営」と定められており、これらを本来業務と呼んでいます。医療法人はこの他、本来業務に支障を来さない範囲で附帯業務(看護等の専門学校、薬局、有料老人ホームなど限定列挙)・付随業務(病院敷地内の売店、駐車場など)を運営することが可能です。

(2)医療法人のデュー・ディリジェンス

デュー・ディリジェンスにあたり、貸借対照表、損益計算書や各施設毎の採算管理資料、入院患者回転率表など財務・経営関連資料の調査はもちろん重要ですが、それらに加えて以下の項目がポイントになります。

イ)医療法人の類型等の確認(決算届の入手)

持分の定めのある法人か否かといった点を含め、医療法人の類型等を確認することが非常に重要です。医療法人の類型を確認できる資料として「決算届」が挙げられます。これは、医療法の規定に基づき医療法人が都道府県知事に対して毎年提出する書類です。この決算届は事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、監事監査報告書で構成されており、医療法人の類型を含む全体像を確認するための有益な資料です。

ロ)診療報酬関連

日本の社会保障制度の中では、医療費の一部を国民負担、残りを健康保険組合等の保険者が負担することになっています。患者が診察を受けた後、医療機関は診療報酬請求書とレセプト(診療報酬明細書)を社会保険支払基金などの審査支払機関に提出・請求します。その医療機関のレセプト枚数により規模感を確認したり、支払基金からの入金通知書を入手して手続が適正に行われているか、過誤請求がどのくらい生じているか等を確認することが重要です。

なお、医療法人の社会保険診療報酬等については、事業税が非課税となります。 医療法人の評価を行ううえで繰延税金資産・負債を計上する際には、適用する実効税率にもご注意ください。

ハ)固定資産

建物や医療機器などに老朽化が進んでいる場合、M&A後に多額の投資が必要となることが想定されるため、いわゆる税務上の時価による評価では妥当性の確保が難しいケースがあります。また、医療機関の土地については流動性が低いことから、相続税評価等一般的に採用される評価額に連動しないこともあり得ます。 特に不動産については、場合によっては不動産鑑定評価書によって適正な価値を算定することや中長期的な修繕費用等の維持コストを見積もることが必要になることもあります。

二)人材の確保状況

医療機関にとって、人材の質を保つことは非常に重要です。特に医師・看護婦の採用について、一定のルートを確保しているかどうかを確認する必要があります。医師であれば医大の特定の医局にルートがある、看護師であれば地元の専門学校にルートがある、といった情報を入手することが重要です。他の業界に比べ、医療機関は多数の有資格者で構成されていることから人材についてもある程度の流動性がありますが、採用ルートの有無により経営の安定性をある程度予測することができます。

ホ)MS法人

MS法人とは「メディカルサービス法人」の略で、医療行為以外のサービスを提供するための法人です。医療法人への不動産賃貸やリネンサービス、医薬品の仕入・在庫管理等の医療周辺業務を提供することが一般的です。これにより、医療サービスに係る収入が医療法人とMS法人に分散されることとなります。

業務委託料や手数料率の設定等、税務署は節税目的のMS法人活用を比較的厳密に見る傾向がありますが、MS法人を積極的に活用し運営している医療法人が多数存在します。 医療法人の正常収益力把握ならびにM&A実行後のMS法人の取扱いを検討する必要があるため、MS法人を含めた対象医療法人グループのビジネス・フローを分析することが重要です。

(3)医療機関M&Aの取引スキーム

病院をはじめとする医療機関のM&Aを検討する際には、株式会社をはじめとする事業会社のM&Aとは異なり出資持分の有無や医療法・各自治体の認可といった業界特有の事項に配慮しつつ進めていく必要があります。

医療法人は、事業譲渡に加え、合併出資持分の譲渡経営陣の交代によるM&Aが可能です。前述の通り、「持分の定めのある法人」「持分の定めのない法人」のどちらに該当するかによって取り得るM&Aの手法が異なるため、留意が必要です。

イ)合併

組織再編行為については、医療法の中で合併(新設合併・吸収合併)のみが認められています。社団法人同士もしくは財団法人同士であれば合併が可能です。

ロ)出資持分の譲渡

持分の定めのある法人は出資持分譲渡によりM&Aが可能です。医療法には出資持分の譲渡に関する特段の規定が置かれていませんが、実務上は一般的に用いられています。この際、出資持分譲渡に伴い社員・理事長の退任を組み合わせることで医療法人の財産権と支配権の両方を移転させることになります。そこで、売り手にとっての手取額、買い手にとっての初期投資額の調整のため、医療法人のM&Aの対価を出資持分価値と役員退職金支給額に分けることも多く行われます。

ハ)社員の入社・退社

持分の定めのない法人は社員の入社・退社により、財団の場合は理事・評議員・監事の交代によりM&Aを行います。この場合、退任する経営陣に退職金を支給することをM&Aの対価として取り扱う手法が一般的です。

(4)スキーム検討上の注意事項

イ)対象医療機関が補助金の交付を受けている場合

医療機関が自治体から交付を受ける補助金については、通常は使途制限が設けられています。M&Aの対象となる医療機関が自治体から補助金の交付を受けて建物や医療機器を取得している場合、これら使途制限に該当してしまうときは補助金を返還する必要が生じます。M&Aを進めていく中で、対象医療機関が補助金を受けているかどうか、またその補助金の使途制限がどのような種類のものかを確認することが重要です。

ロ)理事長の利益相反取引について

医療法では、医療法人の利益を犠牲にして理事長個人の利益を優先する可能性のある「利益相反取引」について規定を置いています。理事長の所有する不動産(病院敷地など)を医療法人が譲り受けるケースや、医療法人から理事長への贈与など利益相反取引に該当する場合、特別代理人を選任する必要があります(医療法には罰則等の規定はありませんが、民法の規定を準用し無効な取引になるという考え方があります)。 M&Aのスキーム構築にあたりこのような利益相反取引が生じる可能性がある場合は留意が必要です。

 

M&Aにおける「ビジネス・デュー・ディリジェンス」

2013-08-16

M&Aにおけるビジネス・デュー・ディリジェンスの目的

M&Aの買収案件が持ち込まれた段階で最初に着手する作業の一つがビジネス・デュー・ディリジェンスです。M&A担当者が取締役会へ提出する資料を作成するために公認会計士へ依頼するケースが多いようです。今回は、事業承継コンサルティング株式会社の公認会計士が実施するビジネス・デュー・ディリジェンスの目的を説明します。

 (1)買収リスクを検出すること

通常、企業が対外的に開示している情報は限られており、特に非上場会社の場合、開示情報はほとんどないでしょう。それゆえ、買い手側としては、粉飾決算がないか、想定するイメージと対象会社の実態と異なっていないかチェックすることが必要となります。例えば、対象会社のビジネスモデルの収益性・成長性を今後も維持することができるか、対象会社の重要な経営資源が実在しているかなどを確認します。

 (2)事業価値源泉を把握すること

M&Aの価値評価で重要なことは、対象会社の中で何が利益を生み出しているのか、すなわち事業価値源泉を把握することによって、買収後の企業価値向上の機会を見つけておくことです。

M&Aが失敗に終わるケースは、「買収価格」よりも「買収後の企業価値」を高めることができない場合です。例えば、買収後の経営統合によってどれくらいの相乗効果が見込まれるのか、不採算事業からの撤退コストがどれくらいかかるのか、買収によって流出する顧客はどれくらいあるのかなど、売り手の経営者の意見も聞きながら、定量化していくことが重要です。すなわち、M&Aによるシナジー効果を定量化して買収価格に反映させることです。

 (3)事業計画を修正すること

M&Aにおいて最も頻繁に使われる評価方法がDCF法です。DCF法によって評価される事業価値は、「将来キャッシュ・フローの割引現在価値」です。それゆえ、売り手が今後どのような事業計画を立案し、どの程度の利益、キャッシュ・フローを創出するかを見極めることが重要になるのです。

そこで、売り手が作成し提出してきた事業計画の背景、根拠や考え方を詳細にヒアリングし、計画中の売上高や利益の妥当性及び実現可能性を検討します。その結果を基にして、買い手側から見て実現可能性が高いと思われる水準へ事業計画を修正していきます。

 M&Aにおけるビジネス・デュー・ディリジェンスの手順

 (1)内部経営環境の把握
経営者に対するヒアリングによって、事業内容、ビジネスモデル、組織構造、ガバナンス体制を把握します。


 (2)外部経営環境の把握
公開情報等を活用して市場規模や伸び率、市場シェアを把握し、同業他社との競合関係を理解します。


 (3)SWOT分析、ファイブ・フォース分析
対象会社の強み・弱みをヒアリングして、経営環境の状況を整理したSWOT分析を実施します。また、仕入先との関係、得意先との関係などをヒアリングし、ファイブ・フォース分析によって競争環境を明確化します。


 (4)収益性の分析
損益計算書をブレイクダウンして、事業別損益から製品・商品・サービス毎の売上高、売上原価、粗利益まで、詳細な収益性分析を行います。また、バリューチェーン分析(仕入→製造→販売の商流を図解すること。)を行うことによって、事業価値源泉の所在を明らかにします。


 (5)事業計画の妥当性検証
計画数値が作られたロジックをヒアリングします。そこで採用されたバリュー・ドライバー(KPI)を特定し、その妥当性を検証することによって、実現可能性の高い事業計画に修正していきます。その際、楽観的シナリオ、現実的シナリオ、悲観的シナリオの3パターンの事業計画を策定します。


事業承継コンサルティング株式会社の提案書サンプル

ビジネス,デュー・ディリジェンス,M&A

M&Aビジネス・デュー・ディリジェンス

海外財産として非上場株式を所有している場合の「国籍ルール改正」

2013-08-06

海外展開している企業の経営者に避けて通れない問題が、海外財産の相続です。特に、シンガポールや香港などの低課税国に持株会社を設立し、その株式を個人で所有しているような場合、海外財産として相続税の課税対象になる可能性があります。

相続税・贈与税に関する国籍ルールの二度の改正がこれまでありました。

一度目の国籍ルール改正

日本の非居住者が相続贈与により国外財産を取得した場合は、日本で課税できないことになっていたころ、子を贈与税の受贈者課税のない外国に転居させ、日本非居住者にして、国外に移した財産を非課税で贈与する、という手法が富裕層の間で流行しました。極めつけが平成11年の武富士株式1600億円の無税贈与でした。

この武富士事件発生年の翌年に、一度目の国籍ルール改正として、相続贈与前5年以内に相続人・被相続人・贈与者・受贈者の何れかの者が日本国内に住所を有していたならば、日本国籍者については、取得した全財産につき相続税や贈与税の納税義務を課すとしました。

二度目の国籍ルール改正

二度目の改正の内容は、相続贈与による財産取得者がたとえ非日本国籍者で日本非居住者だったとしても、被相続人・贈与者が日本国居住者だったら、取得した全財産につき相続税・贈与税の納税義務を課すとしました。

この改正の原因も、日本国籍を持たないことによる贈与税回避の事例が生じたことによります。

原因となる事例は渡米出産米国籍取得

親は渡米して出産し、子は在米出産として米国籍を取得し、在米中の生後約8か月の時(平成16年8月)に、祖父である日本の居住者から、アメリカ国債500万ドルが米国ニュージャージー州の信託財産として引き渡されたというもので、すでに、地裁で納税者勝訴(平成23年3月23日言渡)、高裁で納税者敗訴(平成25年4月3日言渡)を経て、現在は最高裁に上告中です。

高裁敗訴を予測しての税法改正なのに

税務署側は、贈与を受けた生後約8か月の乳児の生活の本拠は、現実に在米中の場所ではなく、養育している両親の生活の本拠地の日本と判定すべき、と主張しました。

地裁判決ではこの主張は受け容れられませんでしたが、高裁では受け容れられて、納税者逆転敗訴となりました。

国籍ルール改正タイミングが遅かったのは、改正後法律の遡及適用との議論を避けたかったからだとすると、国税側は高裁敗訴・納税者勝訴確定を予想していたのかもしれません。

事業承継のための自社株対策(2)「類似業種比準価額を引下げる」

2013-06-29

事業承継のために自社株評価を引下げる方法を検討してみましょう。

類似業種比準価額の3つの比準要素の配分比率は、配当1:利益3:純資産1となっていますから、この中で株価への影響が最も大きな要素は「利益金額」です。それゆえ、類似業種比準価額を引き下げるためには、利益(課税所得金額)を引き下げることが効果的です。

弊社のアドバイス実績では、前年度 3億円の利益を生前贈与を実行する事業年度 1億2千万円(前年比60%減)に減少させることによって、株価を@50,000円から@10,000円まで8割下げたケースがあります。

株価を下げたタイミングで相続時精算課税を適用すれば、贈与税を大幅に軽減(ゼロも可能)した状態で後継者へ株式を引継ぐことが可能となります。

含み損の実現

 例えば、遊休不動産などで含み損を抱えている場合は、売却して損失を顕在化させることによって利益金額を圧縮しましょう。3要素のうち利益金額には、不動産売却益等の臨時的な特別利益を加算する必要はありませんが、臨時的な損失は当然に差し引くことができます。もっとも、「グループ法人税制」の適用があるため、関連会社に飛ばして損失を吐き出すような手法は使うことができません。すなわち、グループ法人間で帳簿価額1千万円以上の資産等を譲渡する場合、譲渡損益を計上することはできません。

退職金の支給

オーナー経営者の退職時と併せて、後継者に株式を生前贈与するのであれば、役員退職金の支払いは利益の圧縮に効果的です。一般的に、法人税法では次のように計算式による金額を役員退職金として認めています。

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤務年数 × 功績倍率

すべての役職を退く場合はもちろん、常勤から非常勤などになる場合でも役員退職金の支給対象になります(この場合でも実態をともなっていることが必要です。たとえば退職後も引続き会社に出社して経営指揮をとって意思決定をしていたら、退職の事実はみとめられないでしょう。)。

役員退職金の支給があると、多額の損金が計上されますから利益を圧縮するとともに、多額の現金支出によって純資産も圧縮しますから、自社株の評価額は下がります。

生命保険の活用

生命保険を活用して利益を圧縮する手段もあります。会社が保険契約者及び受取人となり、役員が非保険者となる生命保険を使い、支払保険料を損金に算入します。また、相続時には、会社が受け取る保険金を死亡退職金に充当することによって、相続人の納税資金を確保することができます。その際、終身保険や長期平準定期保険、逓増定期保険、養老保険が使われます。

高収益部門の分離

 複数の事業を営む会社であれば、高収益部門を会社分割により別会社として独立させる手法が効果的です。これによって、既存会社には低収益部門が残るために利益を減少させることができます。

また、高収益部門が使用する固定資産(不動産)を賃貸すれば、純資産価額を下げることができます。すなわち、純資産価額の評価において、建物を貸家評価(概ね30%減少)、土地を貸家建付地評価(概ね20%減少)とすることができます。

さらに、分社型新設分割によって高収益部門を既存会社の子会社とすれば、将来的に株価が上昇しても、その上昇分に対する法人税等相当額42%を控除することが可能となり、既存会社の株価上昇を抑えることができます。

事業承継のための自社株対策(1)「特定の評価会社から一般の評価会社へ変更する」

2013-06-29

事業承継のために自社株評価の引き下げ方法を検討しましょう。

株式保有特定会社土地保有特定会社は、原則として純資産価額方式により評価することになりますので、類似業種比準価額方式の方が低い場合は、株式等や土地等の保有割合を下げることが必要です。

現在はグループ法人税制が導入されましたので、この適用対象である法人間では資産の譲渡損益は繰り延べになります。つまり、原則として税負担なしにグループ法人間で資産を移転させることが可能です(もちろん登録免許税などは必要です。)。そこで、グループ法人税制の対象会社を複数保有している場合、他のグループ会社に資産を移転することによって、株式等や土地等の保有割合を変えることを検討しましょう。まずはグループ法人間における資産の再配分を検討すべきなのです。

「株式保有特定会社」から外す

株式保有特定会社とは、総資産の価額のうちに占める株式等の価額の割合が一定以上の会社をいいます。吉野工業所事件を起因とする平成25年度の税制改正によって、大会社・中会社・小会社のいずれも50%が基準となりました。

この適用を外すには、不動産の取得によって株式の保有割合を下げる方法が効果的でしょう。

ここで提案したい方法は、オペレーティング・リースです。これは航空機、海上コンテナ、船舶等の大型リース資産へ匿名組合出資する方法です。オペレーティング・リースの特色は、リース収入は毎年定額ですが、リース資産は定額法によって減価償却し、かつ、リース期間が耐用年数を上回っていますから、リース期間の前半は必ず投資損益が赤字となり、投資家に損失が分配されることになっていることです。

オペレーティング・リース取引を実行することによって、「匿名組合出資金」を資産へ計上し、株式等の保有割合を下げることができます。また、オペレーティング・リースであれば、株式の保有割合を下げることと同時に、損失分配額の計上によって利益を圧縮し、類似業種比準価額を引下げることができます。さらに、損失分配額の未払金計上によって、純資産価額を引下げることもできます(大型の償却資産を取得した場合と同様の効果があります。)。ただし、匿名組合への出資の際に多額の現金支出を伴いますので、会社の資金繰りに支障をきたさないように注意する必要があるでしょう。なお、出資金と未払金(損失分配額の累計額)の評価については、従来は簿価評価を行うことが一般的でしたが、近年では損失分配を否認する事例が出てきているため、注意が必要です。

なお、財産評価基本通達189によれば、株式評価前に合理的理由も無く資産構成の変動があり、それが株式保有特定会社を外す目的だと認められた場合には、その変動がなかったものとして判定されると規定されているため、株式評価の直前に節税対策を行うことは避けたほうがよいでしょう。

「土地保有特定会社」から外す

土地保有特定会社とは、総資産の価額のうちに占める土地等の価額の割合が一定以上の会社をいいます。

この適用を外すには、所有土地の有効活用を兼ねて、建物を新築することが効果的です。また、上述したように、オペレーティング・リースによって、大型リース事業への匿名組合出資する方法も効果的でしょう。さらに、M&Aによって事業を買収し、不動産保有会社から事業会社へ転換してしまうことも選択肢の一つです。
もちろん、借入れを行なって預貯金や有価証券に運用すれば、土地の保有割合を簡単に低下させることができますが、租税回避行為とみなされる虞があるため止めておいたほうが無難でしょう。

余談ですが、巷で散見される例として、株式等や土地等を買い戻し条件付きで第三者に売却し、一時的に「未収金」という金銭債権に転化させて保有比率を下げる大胆な手法もありますが、明らかな租税回避行為ですので止めるべきでしょう。

資産家の3つのタイプと事業承継対策

2013-06-24

資産家の3分類と財産の3本柱

財産承継の対策を講じようとする場合、資産家(保有する資産のタイプ)を、企業オーナー、地主、金融資産家の3つに分けて考える必要があります。

(1)企業オーナー  総資産のほとんどが非上場株式(自社株)
(2)地主        総資産のほとんどが不動産(土地・建物等)
(3)金融資産家     総資産のほとんどが金融資産(現預金、金融商品、生命保険等)

これら3つの分類のうち、企業オーナーの相続対策のことを「事業承継」といいます。当社(事業承継コンサルティング株式会社)は企業オーナーの相続対策を中心に支援しておりますが、それ以外の方々は当社と提携する島津会計税理士法人が支援しております。

財産承継,企業オーナー,地主,金融資産家

:問題なし(相続対策は不要) ×問題あり相続対策が必要

遺産分割(円満相続)における相続対策の必要性

(1)非上場株式(△)
会社の事業承継の観点から、財産承継を考えなくてはなりません。すなわち、後継者の支配権を確保させるためには、後継者には少なくとも自社株の過半数(できれば3分の2)を保有させるように遺産分割すべきです。しかし、後継者だけに自社株を承継させるとすれば、遺留分の問題などが発生する可能性があります。

(2)不動産(×)→ 相続対策の必要性高い
  不動産を共有にすると、後に様々なトラブルを招くことになります。しかし、単独所有にすると、他の相続人の不満や、遺留分の問題が発生する可能性があります。遺産分割が最も難航する資産です。


(3)金融資産(○)
現預金など換金性の高い財産であるため、1円単位まで細かく遺産分割することができます。

納税資金(資金確保)における相続対策の必要性

(1)非上場株式(×)→ 相続対策の必要性高い
非上場株式は換金できないことから、納税資金の調達が問題となります。例えば、会社が自己株式として買取る、会社から納税資金を借入れる、銀行から納税資金を借入れるなどの対応が必要となります。

(2)不動産(△)
相続税の納税資金が不足した場合は、不動産を売却して現金化することが可能です。また、物納が可能な場合もあります。

(3)金融資産(○)
相続した金融資産から直接支払うことができるため、全く問題ありません。

財産評価(節税)における相続対策の必要性

(1)非上場株式(○)
株式の相続税評価額が時価を上回ることはほとんどありません。通常は時価を下回る評価となりますので、節税効果を享受することができます。効果的な対策を講じることができれば、相続税評価額が時価を極端に下回るケースもあります。

(2)不動産(△)
通常、不動産の相続税評価額は時価を下回ります。賃貸物件であれば、貸家建付地や貸家の評価減をとることができます。また、小規模宅地の特例などを使うこともできます。

(3)金融資産(×)→ 相続対策の必要性高い
相続税評価額と時価は一致しているため、節税効果は全くありません。

事例を動画で学ぶ経営学(2)新製品開発に取り組む「スリービー」

2013-05-06

中小企業経営

北海道で、夏の限られた時期だけ自生する「たもぎ茸」は、「幻のきのこ」と言われていました。この地元特産の「たもぎ茸」の人工栽培に成功したのが株式会社スリービー(北海道南幌町 吉成篤四郎社長)です。1985年から年間を通して「たもぎ茸」を生産、生食用や水煮などを出荷しており、いまや全国シェアの約80%を占めています。

一方で、「たもぎ茸」の免疫力強化作用にすぐれた有用成分に着目し、産学官共同研究でその活用や商品化に取り組んできました。また、保湿性や抗アトピー性に優れている成分、グルコシルセラミドも多く含まれていることを、北海道大学大学院との共同研究で発見、濃縮液を粉末化し、化粧品などの新商品の開発を始めました。

今回は、既存の技術を活かして新製品の開発に取り組む企業を紹介します。






商品化や販売ルートの確保には課題も多く、吉成社長は、国の施策「中小企業地域資源活用プログラム」による中小機構の地域資源活用支援を利用することに。

スリービーのスキンケア製品は、新規性という部分で競争力があります。また、政府予測で市場の拡大が見込まれており、医療機関にターゲットを明確にしているので販路開拓も見通すことができます。このことから、「商品が売れること」という目的も達成される可能性が高いと考えられました。吉成社長も「研究データに裏付けられたグレードの高い品質の商品にしたい」と意欲的です。

販路拡大など事業支援については、青山アクセス税理士法人へご相談ください。

(出典:中小企業基盤整備機構 企業未来)

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了(経営学及び会計学専攻)
税理士、公認会計士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員

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