事業承継のための自社株対策(1)「特定の評価会社から一般の評価会社へ変更する」

2013-06-29

事業承継のために自社株評価の引き下げ方法を検討しましょう。

株式保有特定会社土地保有特定会社は、原則として純資産価額方式により評価することになりますので、類似業種比準価額方式の方が低い場合は、株式等や土地等の保有割合を下げることが必要です。

現在はグループ法人税制が導入されましたので、この適用対象である法人間では資産の譲渡損益は繰り延べになります。つまり、原則として税負担なしにグループ法人間で資産を移転させることが可能です(もちろん登録免許税などは必要です。)。そこで、グループ法人税制の対象会社を複数保有している場合、他のグループ会社に資産を移転することによって、株式等や土地等の保有割合を変えることを検討しましょう。まずはグループ法人間における資産の再配分を検討すべきなのです。

「株式保有特定会社」から外す

株式保有特定会社とは、総資産の価額のうちに占める株式等の価額の割合が一定以上の会社をいいます。吉野工業所事件を起因とする平成25年度の税制改正によって、大会社・中会社・小会社のいずれも50%が基準となりました。

この適用を外すには、不動産の取得によって株式の保有割合を下げる方法が効果的でしょう。

ここで提案したい方法は、オペレーティング・リースです。これは航空機、海上コンテナ、船舶等の大型リース資産へ匿名組合出資する方法です。オペレーティング・リースの特色は、リース収入は毎年定額ですが、リース資産は定額法によって減価償却し、かつ、リース期間が耐用年数を上回っていますから、リース期間の前半は必ず投資損益が赤字となり、投資家に損失が分配されることになっていることです。

オペレーティング・リース取引を実行することによって、「匿名組合出資金」を資産へ計上し、株式等の保有割合を下げることができます。また、オペレーティング・リースであれば、株式の保有割合を下げることと同時に、損失分配額の計上によって利益を圧縮し、類似業種比準価額を引下げることができます。さらに、損失分配額の未払金計上によって、純資産価額を引下げることもできます(大型の償却資産を取得した場合と同様の効果があります。)。ただし、匿名組合への出資の際に多額の現金支出を伴いますので、会社の資金繰りに支障をきたさないように注意する必要があるでしょう。なお、出資金と未払金(損失分配額の累計額)の評価については、従来は簿価評価を行うことが一般的でしたが、近年では損失分配を否認する事例が出てきているため、注意が必要です。

なお、財産評価基本通達189によれば、株式評価前に合理的理由も無く資産構成の変動があり、それが株式保有特定会社を外す目的だと認められた場合には、その変動がなかったものとして判定されると規定されているため、株式評価の直前に節税対策を行うことは避けたほうがよいでしょう。

「土地保有特定会社」から外す

土地保有特定会社とは、総資産の価額のうちに占める土地等の価額の割合が一定以上の会社をいいます。

この適用を外すには、所有土地の有効活用を兼ねて、建物を新築することが効果的です。また、上述したように、オペレーティング・リースによって、大型リース事業への匿名組合出資する方法も効果的でしょう。さらに、M&Aによって事業を買収し、不動産保有会社から事業会社へ転換してしまうことも選択肢の一つです。
もちろん、借入れを行なって預貯金や有価証券に運用すれば、土地の保有割合を簡単に低下させることができますが、租税回避行為とみなされる虞があるため止めておいたほうが無難でしょう。

余談ですが、巷で散見される例として、株式等や土地等を買い戻し条件付きで第三者に売却し、一時的に「未収金」という金銭債権に転化させて保有比率を下げる大胆な手法もありますが、明らかな租税回避行為ですので止めるべきでしょう。

持株会社が「株式保有特定会社」に該当していませんか?

2013-06-23

親族内の事業承継対策として、持株会社を設立するケースが多く見られます。先代経営者が持株会社を設立するケース(株式移転、会社分割、現物出資など)、後継者が持株会社を設立し、銀行借入金のよって先代経営者の自社株式を買い取るケースなど、様々な方法があります。このように事業承継対策で持株会社を設立した場合、その自社株評価が高くなりますので注意が必要です。

評価会社が所有する株式および出資の価額の合計額(相続税評価額)の総資産(相続税評価額)に占める割合が50%以上の会社を、株式保有特定会社といいます。

類似業種比準価額方式においては、配当・利益・純資産価額(簿価ベース)の 3 要素を類似業種と比較することで、株価を評価します。これに対して、純資産価額方式においては、会社資産の相続税評価額(すなわち、時価ベース)をもとに株価を評価します。このため、会社資産に占める株式等の割合が高く、かつ含み益が生じている状況においては、時価ベースを用いる純資産価額方式よりも、簿価ベースを用いる類似業種比準価額方式の方が、一般的に評価額が低くなります。そこで、課税の公平の観点から評価の適正化を図る目的で、特定評価会社の一類型として、「株式保有特定会社」の区分が設けられました。

株式保有特定会社は、保有資産のほとんどが株式という資産構成が特殊な会社です。このような会社は、上場会社に比べて資産構成が著しく偏っており、上場会社レベルの非上場会社の株式に対して適用すべき類似業種比準価額方式により株式評価を行うことは合理的といえません。むしろ、このような会社の株式を評価する場合には、会社の資産価値をよく反映できる純資産価額方式を採用することが適当といえます。それゆえ、株式保有特定会社については、原則として純資産価額方式で評価されます。

ただし、純資産価額方式に代えて、「S1+S2」方式とよばれる類似業種比準価額方式を修正した評価方式により評価をすることもできます。ちなみに、「S1+S2」のうち「S2」は、発行会社が保有する株式等に相当する部分の価額をいい、純資産価額方式により評価されます。「S1」は、発行会社が保有する株式等やその株式等に係る配当金を除外したところで、原則的評価方式、つまり会社規模に応じ類似業種比準価額方式、純資産価額方式またはその併用方式により評価した金額となります。このS1の金額とS2の金額の合計額が、「S1+S2」方式による評価額となります。

株式保有特定会社株式保有特定会社に該当した場合、自社株評価が高くなりますので、親族内承継が困難となります。それゆえ、株価引下げのための事業承継対策が必要です。例えば、賃貸不動産を購入することによって、総資産に占める株式の割合を引下げる方法が効果的です。投資信託など株式以外の金融商品を取得することも効果があるでしょう。いずれにせよ、株式保有特定保有会社に該当しないよう、早めに事業承継対策を講じておく必要があります。

 

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了(経営学及び会計学専攻)
税理士、公認会計士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員

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