事業承継のための「株式承継」とは

2013-06-24

事業承継対策のために、企業オーナーは、相続が発生する前に贈与や売却などで自己株の数を減らしていかなければいけません。贈与や売却は予め実行時期を決めることができます。これはいつ起きるかわからない相続と異なる点です。実行時期が決まっていれば、様々な株価引下げ対策を講じることができるのです。

子供を後継者と決めて、親族内で自社株の全て(発行済普通株式100%)を承継して引退する単純なケースを考えてみましょう。以下の5つの方式があります。

(1)贈与(暦年課税)
株式を贈与し、暦年課税方式により贈与税申告を行います。
贈与税の税率は他の国税に比べても非常に高いものです。株式の評価額次第では、子供に多額の贈与税負担が生じてしまうおそれがあります。この多額の贈与税を支払うことができないために、暦年贈与が採用されないケースが多くみられます。

(2)贈与(相続時精算課税)
株式を贈与し、相続時精算課税方式により贈与税申告を行います(税率は2,500万円の特別控除を差し引いた残額に対して一律20%。)。
この方式によれば、当面の税負担は暦年課税方式よりも軽くなります。しかし、相続発生時に精算しなくてはなりません(相続財産に加算して、贈与税を控除します。)。
最終的に精算されるものですが、株価を贈与時の評価額に固定することができ、株価上昇時には税負担の増加を抑えることができます。
引退する事業年度に一時的に株価を引き下げて、株式を一気にまとめて贈与することが効果的でしょう。

(3)贈与(事業承継税制)
株式を贈与し、贈与税(相続税)の納税猶予制度の適用を受けます。これにより贈与税は基本的にゼロとなります。
しかし、子供は第三者にM&Aで株式を売却しようとする場合や、廃業して会社を解散しようとする場合など一定の事由が発生すると、贈与税の一括納付が必要となります(利子税も課されます。)。
それゆえ、事実上、子供は死ぬまで会社経営を続けなくてはいけなくなります
また、納税猶予されるのは発行済株式の3分の2が限度ですので、残りの3分の1は他の方法を採らなければなりません。

(4)株式譲渡
後継者が出資する資産管理会社(又は後継者個人)に株式を売却します。例えば、後継者である子供が資産管理会社を設立し、銀行借入れで自社株を時価(=相続税評価額)で買取ります。オーナーには譲渡所得の20%の所得税が課されますが、後継者には贈与税は課されません。また、贈与の場合と異なり、相続時に遺留分の制約を受けることもありません。
しかし、オーナーに多額の現金が入るため、相続財産を減らすことができず、相続税対策としての効果はありません。また、後継者の資産管理会社は、自社株から得られる収益(配当金など)で銀行借入金を返済しますので、会社の収益性を維持しなければなりません。

(5)相続
死ぬまで何もしません。

以上、まとめると以下の表のようになります。

株式承継対策 長所 短所
株式贈与
(暦年課税)
1回で完結する。 贈与税負担が重い。
株式贈与
(相続時精算課税)
株価の上昇を止められる。
当面の税負担が少ない。
相続時に精算が必要。
株式贈与
(事業承継税制)
贈与税負担がほとんどない。 贈与後の機動性に欠く。
株式譲渡 オーナーに老後の生活資金が入る。 オーナーの相続財産が減らない。
 

持株会社が「株式保有特定会社」に該当していませんか?

2013-06-23

親族内の事業承継対策として、持株会社を設立するケースが多く見られます。先代経営者が持株会社を設立するケース(株式移転、会社分割、現物出資など)、後継者が持株会社を設立し、銀行借入金のよって先代経営者の自社株式を買い取るケースなど、様々な方法があります。このように事業承継対策で持株会社を設立した場合、その自社株評価が高くなりますので注意が必要です。

評価会社が所有する株式および出資の価額の合計額(相続税評価額)の総資産(相続税評価額)に占める割合が50%以上の会社を、株式保有特定会社といいます。

類似業種比準価額方式においては、配当・利益・純資産価額(簿価ベース)の 3 要素を類似業種と比較することで、株価を評価します。これに対して、純資産価額方式においては、会社資産の相続税評価額(すなわち、時価ベース)をもとに株価を評価します。このため、会社資産に占める株式等の割合が高く、かつ含み益が生じている状況においては、時価ベースを用いる純資産価額方式よりも、簿価ベースを用いる類似業種比準価額方式の方が、一般的に評価額が低くなります。そこで、課税の公平の観点から評価の適正化を図る目的で、特定評価会社の一類型として、「株式保有特定会社」の区分が設けられました。

株式保有特定会社は、保有資産のほとんどが株式という資産構成が特殊な会社です。このような会社は、上場会社に比べて資産構成が著しく偏っており、上場会社レベルの非上場会社の株式に対して適用すべき類似業種比準価額方式により株式評価を行うことは合理的といえません。むしろ、このような会社の株式を評価する場合には、会社の資産価値をよく反映できる純資産価額方式を採用することが適当といえます。それゆえ、株式保有特定会社については、原則として純資産価額方式で評価されます。

ただし、純資産価額方式に代えて、「S1+S2」方式とよばれる類似業種比準価額方式を修正した評価方式により評価をすることもできます。ちなみに、「S1+S2」のうち「S2」は、発行会社が保有する株式等に相当する部分の価額をいい、純資産価額方式により評価されます。「S1」は、発行会社が保有する株式等やその株式等に係る配当金を除外したところで、原則的評価方式、つまり会社規模に応じ類似業種比準価額方式、純資産価額方式またはその併用方式により評価した金額となります。このS1の金額とS2の金額の合計額が、「S1+S2」方式による評価額となります。

株式保有特定会社株式保有特定会社に該当した場合、自社株評価が高くなりますので、親族内承継が困難となります。それゆえ、株価引下げのための事業承継対策が必要です。例えば、賃貸不動産を購入することによって、総資産に占める株式の割合を引下げる方法が効果的です。投資信託など株式以外の金融商品を取得することも効果があるでしょう。いずれにせよ、株式保有特定保有会社に該当しないよう、早めに事業承継対策を講じておく必要があります。

 

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了(経営学及び会計学専攻)
税理士、公認会計士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員

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