「上場会社の非上場化(MBO等)の株価算定に係る適時開示規則の改正」

2013-09-21

2013年7月8日に公表された適時開示規則の改正により、MBO(公開買付者が対象会社の役員である場合の公開買付け)を行う場合や、支配株主等が買付者となる公開買付けを行う場合の開示内容が拡充されました(2013年10月1日から適用)。

従前から、上場会社が上場廃止を伴う公開買付けを受ける場合や支配株主から公開買付けを受ける際等には、上場会社は意見表明に際して第三者算定機関からの株価算定書を取得して証券取引所に提出することが求められていましたが、その際に算定内容を開示するにあたっては、採用した算定方法と算定結果、その方式を採用した理由を記載すれば足りていました。

しかし、本改正後は、類似上場会社比較法であれば選択した類似上場会社とその選定理由や倍率として採用した財務指標等、DCF法であれば、前提とした財務予想の具体的な数字や割引率、残存価値の算定方法と採用した数値等の具体的な算定方法を開示することが求められることとなります。

これらはこれまで、少なくとも日本では、一般に開示されることがほとんどなかった情報です。

「(3)算定に関する事項 ②算定の概要」に係る開示・記載上の注意事項は、以下のように改正されました。

3.当該公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由(3)算定に関する事項②算定の概要

・  MBO等に関して意見表明を行う場合には、算定の重要な前提条件として、市場株価法、類似会社比較法及びディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法については、以下の内容を含めて記載する。その他の算定手法については以下の内容に準じて重要な前提条件を記載する。

①  市場株価法

・算定基準日、計算対象期間及び算定基準日が算定書作成日当日又はその前営業日でない場合には、当該日を基準日とした理由
・計算方法(終値単純平均か加重平均かの別)
・その他特殊な前提条件がある場合には、その内容

②  類似会社比較法

・比較対象として選択した類似会社の名称及び当該会社を選択した理由
・マルチプルとして用いた指標(EV/EBITDA、PER、PBRなど)
・その他特殊な前提条件がある場合には、その内容

③  ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法

・算定の前提とした財務予測(各事業年度における売上高、営業利益、EBITDA及びフリー・キャッシュ・フロー)の具体的な数値
※  上場維持を前提とする場合を除く。
・算定の前提とした財務予測の出所
・算定の前提とした財務予測が当該取引の実施を前提とするものか否か
・算定の前提とした財務予測で大幅な増減益を見込んでいるときは、当該増減益の要因


※上場維持を前提とする場合は、算定の前提とした財務予測で大幅な増減益を見込んでいるときはその概要(計数を含む。)及び増減益の要因を記載し、算定の前提とした財務予測で大幅な増減益を見込んでいないときはその旨を記載する。

※「大幅な増減益」に該当するかどうかについては、各当事会社の当該公開買付け実施後5事業年度のいずれかにおいて、各々の前事業年度と比較して、利益の増加又は減少見込額が30%未満であるか否を目安とする。

・割引率の具体的な数値(レンジ可)
・継続価値の算定手法及び算定に用いたパラメータの具体的な数値(レンジ可)
・その他特殊な前提条件がある場合には、その内容

親族内事業承継の方法

2013-06-23

事業承継は大別して、親族内の事業承継(相続)と親族外の事業承継(MBO、M&A)があります。今回は親族内に焦点を当てましょう。

親族内の事業承継を行うためには、後継者へ自社株や事業用資産を移転する必要があります。これには、以下の3つの方法があります。

後継者に対する自社株の売却

売買による承継は、現経営者の保有する自社株や事業用資産について、現経営者の生前に、売買によって後継者へ移転させる方法です。適正な対価を支払って資産を移転させる方法ですので、他の相続人から留分を主張されるおそれはなく後継者の地位が安定します。

しかし、後継者は資産の買取りに必要な対価として多額の対価を支払わなければなりません。また、現経営者は保有する自社株が減った代わりに対価としての現金を取得することになりますので、相続財産を減らすことができません。

現経営者から後継者への売買によって、現経営者に資産の譲渡益が発生する場合がありますが、その場合は譲渡益に対して所得税が課税されます。譲渡所得に対する税率は20%(所得税15%、住民税5%)です。

後継者への売却によって譲渡益が計上される場合には、他の含み損のある株式の譲渡損を実現させることによって、同一年度で「損益通算」を図るとよいでしょう。

なお、後継者への株式売却が時価に比べて著しく低い価格でなされた場合、株式の時価と後継者が負担した対価との差額分については、後継者が贈与を受けたものみなされ、贈与税が課されるため、注意が必要です。

後継者に対する自社株の生前贈与

生前贈与による承継は、現経営者の保有する自社株や事業用資産について、現経営者の生前に、贈与によって後継者へ移転させる方法です。現経営者の生前のうちに早くから企業経営に対して影響を持つことができます。また、後継者は自社株の取得に対価を支払う必要はありません

しかし、暦年贈与の場合、年間110万円を超える部分には贈与税を納付する必要が生じます。また、生前贈与によれば、相続時に他の相続人から遺留分を主張されるおそれがあり、後継者の地位はやや不安定となります。遺留分を侵害する生前贈与は効力を否定されてしまうのです。

遺留分の主張を回避する方法としては、相続人に遺留分を事前に放棄する手続きを取ってもらうことや、経営承継円滑化法の除外合意を活用することが考えられます。


なお、口約束だけで贈与を行い、証拠が何もない場合、生前贈与が否定されてしまうおそれがあります。そこで、正式な贈与契約書を作成することや、基礎控除額を僅かに超える贈与を行なって後継者が贈与税の申告、納税を行なっておくことなどの方法で証拠を残しておくほうが安全でしょう。

自社株の評価額が今後上昇する見込みがある場合は、相続時精算課税制度を利用して後継者に対して自社株を贈与することにより、大幅な節税が可能になる場合があります。

後継者に対する自社株の相続

相続による事業承継は、現経営者の保有する自社株や事業用資産について、現経営者の死亡時に、相続によって後継者へ移転させる方法です。後継者は自社株取得のための対価を支払う必要はありませんし、相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人数ですから、贈与税よりも税負担は軽いものとなります。

しかし、相続人が複数いるにもかかわらず、現経営者が遺言を残さずに死亡した場合は、自社株や事業用資産の取得のために遺産分割協議を経なければならず、後継者の地位は極めて不安定なものとなります。すなわち、相続が発生すると、自社株が全相続人の共有となり、各相続人は自由に株式を処分することができなくなります。また、たとえ遺言書が残されていた場合であっても、他の相続人から遺留分を主張されるおそれがあり、後継者の地位は不安定になります。

類似業種比準価額方式による非上場株式の評価

2013-06-22

 類似業種比準価額

類似業種比準価額方式は、評価会社の一定の経営指標と同業種の複数の上場会社の一定の経営指標を比較し、その割合を上場会社の株価に乗じて計算する方式です。

非上場株式,相続,評価,類似業種比準

(注)それぞれの割合は小数点2位未満を切り捨てます。

(注2)それぞれ小数点2位未満を切り捨てた後の数値を合算して5で除した割合を計算します(小数点2位未満切り捨て)。

上記算式中の「A」、「Ⓑ」、「Ⓒ」、「Ⓓ」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次によります。

「A」=類似業種の株価

業種目の選定は、国税庁から公表される「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」通達の中から判定します。また、Aの金額は、課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価及び前年平均株価の4つのうち最も低いものとします。

「Ⓑ」=評価会社の1株当たりの配当金額

評価会社の1株当たりの配当金額は、直前期末以前2年間の平均配当額(特別配当、記念配当等の非経常的配当金は除きます。)を直前期末の発行済株式数で除して計算します。

なお、ここでの発行済株式数とは、類似業種との比較可能性を確保するため、資本金等の額を50円で除した株式数を用います。したがって、登記されている実際の発行済株式総数とは異なります。

「Ⓒ」=評価会社の1株当たりの利益金額

評価会社の1株当たりの年利益金額は、直前期末の利益金額、直前期末以前2年間の利益金額の合計額の2分の1のいずれか小さいほうを直前期末の発行済株式数で除して計算します。

ここでの利益金額は、以下の算式で計算します。

年利益金額   = 法人税の課税所得金額
        - 特別利益などの非経常的利益金額
        + 受取配当等の益金不算入額
        - 受取配当等に係る所得税額控除額
        + 繰越欠損金の損金算入額


ただし、1株当たりの利益金額がマイナスになった場合の利益金額は「ゼロ」とします。

「Ⓓ」=評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額

直前期末の資本金額、資本積立金額及び利益積立金額(別表五(一)の差引翌期首現在利益積立金額の31「差引合計額」)の合計額を直前期末の発行済株式数で除して計算します。利益積立金額がマイナスにより1株当たりの純資産価額がマイナスになったときは「ゼロ」とします。

「B」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額

「C」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額

「D」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額)

類似業種比準価額方式では、評価会社の実績(1株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額)を上場会社と比較して評価額を調整します。この中でも利益金額の調整割合が5分の3と大きくなっており、利益が大きいと株価が高くなります。類似業種比準価額を下げるには各要素を下げればよいのですから、1株あたりの配当金額や純資産価額、特に利益金額を引き下げる対策をたてることになります。

会社の利益を引き下げるには、従業員賞与を支給する、古い固定資産を除却する、寄付金を支払うといった方法を使います。考え方は法人税の節税手法と同じです。また、役員に昇格した人や子会社に転籍した従業員に退職金を支給すれば、年利益金額を圧縮することができます。さらに、土地や有価証券の含み損を思いきって実現させることも効果的です。含み損を実現させると利益が下がるだけでなく、純資産価額も引き下げることができます。

利益の圧縮には一時的なものと継続的なものがありますので、一時的なものであれば株価は下がった後、速やかに後継者に株を移転しなければなりません。

組織再編の手法を使うのであれば、後継者を株主とする新会社を設立して、高収益部門を事業譲渡すれば、利益金額を減少させることができます。また、純資産価額がマイナス(債務超過)の会社を合併すれば、純資産価額は下がることになります。

「相続時に非上場株式はどのように評価するか」

2013-06-22

不動産相続と事業承継

非上場株式の評価は、「株式の持株割合」と「発行会社の規模」によって評価方法が決まります。

株主の持株割合別の評価

非上場会社の株式は、その株式を所有する株主の持株数によって価値が異なります。たとえば、会社オーナー一族のような支配(同族)株主は、その会社の株式の大部分を所有し、その所有を通じて会社を支配しているので、その所有株式には会社支配権としての価値があります。

これに対して、同族以外の従業員や役員のように少数の株式を所有している人は、メリットは会社から配当をもらえることのみなので、その所有株式には配当を期待できる程度の価値しかありません。

このため、非上場株式の相続税評価は、株式取得後の持株割合に応じて評価方法が決まります。

相続、遺贈または贈与によってその株式を取得する者は、取得後の持株割合に応じて、原則的評価方式(類似業種比準価額方式、純資産価額方式およびその併用方式)を適用すべき支配株主(同族株主等)と、特例的評価方式(配当還元方式)を適用すべき少数株主とに区分されます。ここでの株主の判定は、全て相続等によって株式を移動した後の株式数に基づいて判定する点に注意が必要です。
その判定フローチャートは次のとおりです。

非上場株式,議決権,判定,原則的評価
(注1) 同族株主とは、評価会社の議決権の数を合計で30%以上所有する次の1~3のグループをいいます。ただし、議決権比率が50%超所有するグループがいる場合は、他のグループはたとえ30%以上の議決権比率を有していても同族株主とはなりません。
1. 株主等
2. 株主等の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)等
3. 株主等およびその同族関係者が議決権の数を50%超所有する会社

例えば、以下のケースであれば、グループAとグループBのいずれも同族株主となります。

株主グループ A B C その他 合計
議決権比率 35% 35% 20% 10% 100%

しかし、以下のケースであれば、グループAのみが同族株主となります。

株主グループ A B C その他 合計
議決権比率 51 30% 15% 4% 100%

(注2) 中心的な同族株主とは、評価会社の議決権の数を合計25%以上所有する次の1~3のグループをいいます。
1. 株主等
2. 株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1親等の姻族(甥、姪は対象外)
3. 1および2の者が議決権の数を25%以上所有する会社

(注3) 中心的な株主とは、同族株主のいない会社で、評価会社の議決権の数を合計15%以上所有する次の1~3のグループのうち、単独で10%以上所有している株主をいいます。
1. 株主等
2. 株主等の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)等
3. 株主等およびその同族関係者が議決権の数を50%超所有する会社

(注4) 役員とは、社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役、監査役等をいい、平取締役、使用人兼務役員は除きます。

発行会社の規模別の評価

非上場会社のなかには、上場会社並みの大企業もあれば個人事業程度の零細企業もあります。そこで、非上場会社の同族株主の所有株式については、「従業員数」「直前期1年間の売上高」「簿価総資産額」という会社規模の三要素によって、評価対象会社を「大会社」「中会社」「小会社」「特定の評価会社」の4つに区分し、それぞれ適用できる評価方法を次のように規定しています。

会社の規模は、卸売業、小売・サービス業またはそれらの業種以外の業種の別に、直前期末の総資産価額(帳簿価額)、直前期末以前1年間の従業員数、直前期末以前1年間の取引金額の組合わせによって判定します。具体的には、次の「会社規模の判定基準」に基づいて判定します。

会社規模の判定基準
1. 従業員数が100人以上の会社は大会社とする
2. 従業員数が100人未満の会社は、以下の表(1)と表(2)のいずれか大きい方で判定する

非上場株式,評価,規模,大会社,中会社,小会社
・上場会社並みの大会社は、原則として、会社の業績に着目する類似業種比準価額方式で評価します。純資産価額よりも類似業種比準価額のほうが低額になるのが通常ですが、たまたま純資産価額のほうが下回った場合は、純資産価額で評価することもできます。

・個人事業と変わらない小会社は、原則として、会社の資産価値に着目する純資産価額方式によって評価します。ただし、類似業種比準価額方式と純資産価額方式との折衷額で評価することもできます。(折衷額を算出するのに際して用いられる比重割合は0.5で、類似業種比準価額と純資産価額の平均値となります。)

・大会社と小会社の中間にある中会社の株式は、大会社と小会社の評価方法の併用方式で評価します。併用割合は会社規模によって異なります。ただし、純資産価額方式で評価することもできます。

・会社の資産保有状況や営業の状況が特異である会社の株式は、「特定の評価会社の株式」として、どのような会社規模であっても原則として純資産価額方式によって評価します。

非上場株式の評価体系の概要をまとめると、次のようになります。

非上場株式,相続税,評価

(注1) 議決権割合50%以下の同族株主グループに属する株主については、その80%で評価します。

(注2) 直前期を基準として1株当たり配当・利益・簿価純資産のうち、いずれか2つが0で、かつ、直前々期を基準として1株当たり配当・利益・簿価純資産のうちいずれか2以上が0の会社をいいます。

(注3) 直前期を基準として1株当たり配当・利益・簿価純資産の3要素が0の会社をいいます。

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了(経営学及び会計学専攻)
税理士、公認会計士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員

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