事業承継のための自社株対策(3)「会社規模のランクアップ」

2013-06-29

事業承継対策として自社株評価を引下げる方法を考えてみましょう。

会社区分がランクアップすれば、通常は純資産価額よりも低い評価となる類似業種比準価額の適用割合が高くなるため有利です。中会社の大であれば、大会社を目指すべきでしょう。

その方法は、(1)従業員数を増やすこと、(2)売上高を増やすこと、(3)総資産を増やすことによります。ただし、総資産だけ増えても、従業員数や売上高が増えなければ区分変更は認められない仕組みとなっており、例えば、借入金と普通預金を両建て計上して総資産を増やしてもランクアップさせることはできません。

即効性のある方法は、M&Aによる事業譲受や合併でしょう。これによって従業員数や売上高を増やすことができれば、Lの割合(類似業種比準価額の適用割合)を上げることによって株価を引下げることができます。外部の会社とのM&Aでも構いませんが、複数のグループ会社を経営しているならば、合併によって単純に従業員数と総資産を増やすことによって、会社規模のランクアップを図ることができます。特に、合併する片方の会社が赤字ならば、利益を圧縮できることに加えて、純資産を引下げることもできますので、類似業種比準価額を引下げる効果が期待できます。

また、M&Aによって株価の低くなる別業種の事業を譲り受け、それによって類似業種比準価額の計算に適用する業種目(国税庁が公表)を変えることができれば、株価が下がることができる可能性があります。

類似業種比準価額方式による非上場株式の評価

2013-06-22

 類似業種比準価額

類似業種比準価額方式は、評価会社の一定の経営指標と同業種の複数の上場会社の一定の経営指標を比較し、その割合を上場会社の株価に乗じて計算する方式です。

非上場株式,相続,評価,類似業種比準

(注)それぞれの割合は小数点2位未満を切り捨てます。

(注2)それぞれ小数点2位未満を切り捨てた後の数値を合算して5で除した割合を計算します(小数点2位未満切り捨て)。

上記算式中の「A」、「Ⓑ」、「Ⓒ」、「Ⓓ」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次によります。

「A」=類似業種の株価

業種目の選定は、国税庁から公表される「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」通達の中から判定します。また、Aの金額は、課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価及び前年平均株価の4つのうち最も低いものとします。

「Ⓑ」=評価会社の1株当たりの配当金額

評価会社の1株当たりの配当金額は、直前期末以前2年間の平均配当額(特別配当、記念配当等の非経常的配当金は除きます。)を直前期末の発行済株式数で除して計算します。

なお、ここでの発行済株式数とは、類似業種との比較可能性を確保するため、資本金等の額を50円で除した株式数を用います。したがって、登記されている実際の発行済株式総数とは異なります。

「Ⓒ」=評価会社の1株当たりの利益金額

評価会社の1株当たりの年利益金額は、直前期末の利益金額、直前期末以前2年間の利益金額の合計額の2分の1のいずれか小さいほうを直前期末の発行済株式数で除して計算します。

ここでの利益金額は、以下の算式で計算します。

年利益金額   = 法人税の課税所得金額
        - 特別利益などの非経常的利益金額
        + 受取配当等の益金不算入額
        - 受取配当等に係る所得税額控除額
        + 繰越欠損金の損金算入額


ただし、1株当たりの利益金額がマイナスになった場合の利益金額は「ゼロ」とします。

「Ⓓ」=評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額

直前期末の資本金額、資本積立金額及び利益積立金額(別表五(一)の差引翌期首現在利益積立金額の31「差引合計額」)の合計額を直前期末の発行済株式数で除して計算します。利益積立金額がマイナスにより1株当たりの純資産価額がマイナスになったときは「ゼロ」とします。

「B」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額

「C」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額

「D」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額)

類似業種比準価額方式では、評価会社の実績(1株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額)を上場会社と比較して評価額を調整します。この中でも利益金額の調整割合が5分の3と大きくなっており、利益が大きいと株価が高くなります。類似業種比準価額を下げるには各要素を下げればよいのですから、1株あたりの配当金額や純資産価額、特に利益金額を引き下げる対策をたてることになります。

会社の利益を引き下げるには、従業員賞与を支給する、古い固定資産を除却する、寄付金を支払うといった方法を使います。考え方は法人税の節税手法と同じです。また、役員に昇格した人や子会社に転籍した従業員に退職金を支給すれば、年利益金額を圧縮することができます。さらに、土地や有価証券の含み損を思いきって実現させることも効果的です。含み損を実現させると利益が下がるだけでなく、純資産価額も引き下げることができます。

利益の圧縮には一時的なものと継続的なものがありますので、一時的なものであれば株価は下がった後、速やかに後継者に株を移転しなければなりません。

組織再編の手法を使うのであれば、後継者を株主とする新会社を設立して、高収益部門を事業譲渡すれば、利益金額を減少させることができます。また、純資産価額がマイナス(債務超過)の会社を合併すれば、純資産価額は下がることになります。

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了(経営学及び会計学専攻)
税理士、公認会計士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員

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