事業承継の方向性が決まったときの経営承継の進め方

2015-12-08

子供が会社を承継する場合(親族内承継)

子供へ社長交代しますので、経営者として一人前になるよう、子供の後継者教育に着手します。一般的に、後継者の育成期間は5~10年程度かかるといわれています。関係者(取引先、従業員、金融機関など)の理解、会社内部でのジョブ・ローテーション、会社外部の後継者研修の受講など、後継者として会社を経営していくにあたっての知識・経験を蓄積していく必要があり、計画的に行っていく必要があります。事業承継計画を作らなければなりません。

事業承継計画は、現経営者だけで策定するのではなく、必ず現経営者と後継者が一緒に作成するようにしましょう。特に、経営理念・ブランド・ノウハウ・技術力などの目に見えにくい会社の強み(無形資産)について、現経営者と後継者でコミュニケーションをとりながら承継していく必要があります。

また、現経営者が所有している自社株式や事業用不動産などをどのように後継者へ承継(贈与)するか、後継者へ個人財産の大部分を承継した場合に後継者ではない他の親族への財産配分はどうするかといった財産承継の問題も伴います。

親族外の役員・従業員が承継する場合

昨今、親族内で事業承継ができないケースが増えてきています。子供以外の親族で後継者候補がいないかを検討し、いないようであれば会社内部の役員・従業員の中に後継者候補がいないかを検討します。ただ、従業員はもともと経営者になるつもりで会社に入社していないため、「会社を継ぐ覚悟」という点で、親族内承継よりもハードルが高い傾向にあります。

また、銀行に対する経営者保証の引継ぎ、現経営者の親族や取引先・従業員からの理解を得ること、自社株式を現経営者から買い取るための資金調達など、後継者である役員・従業員には大きな問題が伴います。

親族外の第三者へ売却する場合

事業承継の手段としてM&Aも有効です。会社内部の役員・従業員にも後継者候補がいないようでしたら、社外の第三者に後継者候補を探すことになります(会社売却、後継者候補を外部から招聘など)。この場合、事業の引継ぎ相手(後継者)をどのように見つけるかが最大の難関ですが、普段の取引先との付き合いの中で引継ぎ先を見つけること、同じ市場にいる競合他社を引継ぎ先とすることが考えられます。そのため、M&Aを専門とする公認会計士に相手探しを依頼することで、社外の後継者を見つけることになります。

【事業承継税制】贈与税の納税猶予制度から相続税の納税猶予制度への切り替え

2015-12-06

事業承継税制は、先代経営者から後継者への社長交代のタイミングで自社株式を贈与することを想定しています(相続の際に自社株式を相続人へ承継することは想定していません。)。つまり、先代経営者が贈与者で、後継者が受贈者です。

それゆえ、先代経営者が死亡する際に、どのように相続税の納税猶予制度へ意向するのかが、明確に説明されていません。事業承継税制に取り組む場合は、この点まで理解しておく必要があるでしょう。

(1)原則的な取扱い
先代経営者が死亡した場合、後継者が先代経営者から相続によって自社株式を取得したものとみなされることになります。ただし、自社株式の評価額は、相続時ではなく贈与時の価額によることになります。
この場合、先代経営者が死亡した日から6ヶ月以内に贈与税の「免除届出書」を税務署長に提出することによって、これまで猶予されていた贈与税は免除されます。
また、自社株式について相続税の納税猶予制度の適用を受ける場合には、相続開始日から8ヶ月以内に経済産業大臣に申請を行い、10ヶ月以内に相続税申告を行う必要があります。

事業承継税制

(2)事業継続期間の要件はどうなるか?
贈与税の納税猶予制度が適用されますと、以下のような事業継続期間(経営承継期間)の要件が課されます。
① 代表者であること
② 雇用の8割以上(平均)を維持すること
これに加えて、事業継続期間を終了後も続けて課せられる要件として、③ 株式を継続所有することもあります。
この点、相続税の納税猶予制度の適用を行いますと、また事業継続期間がゼロからスタートするのではないかという疑問が生じるはずです。
これに関する取扱いですが、相続税の納税猶予制度への切り替え時には、①代表者要件、②雇用維持要件は課されないものとなっています。ただし、③株式継続所有要件については事業継続期間に限られた要件ではないため、相続の発生後も継続して課せられることには留意してください。

(3)結局、事業承継税制は何が足枷になるのか?
このように①代表者要件、②雇用維持要件は、先代経営者から後継者へ自社株式が贈与されてから5年間だけ課せられる要件です。事業承継税制が、雇用維持を制度趣旨とするものであることから、当然に求められる要件だと言えましょう。一方、③株式継続所有要件は、後継者が次の後継者(先代から数えて3代目社長)へ事業承継する日まで課せられる要件です。つまり、後継者はM&Aで自社株式を第三者に売却することはできないという足枷が課せられます(第三者に対して贈与し、それに経営承継円滑化法を適用することができますが、それではM&Aで会社売却して現金を得ようとする目的は達せられません。)。M&Aできないこと、これが事業承継税制の足枷ということができそうです。

 

12/5(土)&19(土)中小企業の相続・事業承継の実務【電卓持参必須】、中小企業白書

2015-11-23

あきない総研主催理論政策更新研修にて岸田が講師を担当します。テーマは事業承継です。非上場株式の株価の計算演習を行いますので、電卓持参が必須の研修となっています。

2015年12月5日(土)14:00-18:00 東京六本木会場(katanaオフィス六本木・2階会議室)

2015年12月19日(土)13:00-17:00 東京六本木会場(katanaオフィス六本木・2階会議室)

お申込みはこちらから!
あきない総研の理論政策更新研修の申込みWebサイト

【電卓持参必須】中小企業の相続・事業承継の実務、中小企業の事業承継の現状(中小企業白書)

  • 岸田 康雄
 

①中小企業オーナーの相続・事業承継の実務

事業承継には「経営承継」と「資産承継」という法人・個人両面の問題がありますが、中小企業診断士は「経営承継」を重視する一方で、「資産承継」について軽視する傾向にあります。後継者への株式の移転に際して多くの税務上の論点を伴うからです。本研修では、事例や計算例を通じて、事業承継コンサルティング手法を「経営承継」と「資産承継」の両面からわかりやすく解説いたします。特に、非上場株式を後継者へ移転する際の税務上の論点(株式評価など)を理解します。

【株式承継】
非上場株式の評価、相続税の計算方法、最適な株式承継スキーム(贈与、譲渡、相続)、親族外承継とM&A

【経営承継】
後継者の選定と経営権の移転方法、事業価値源泉の分析と維持・承継、事業承継計画書の作成

②中小企業の事業承継の現状(中小企業白書)

企業経営の多くの部分を、経営者の経営能力や経験に依存する中小企業にとって、経営者の高齢化と後継者難は、廃業に直結する問題です。中小企業が有する技術やノウハウ等の事業価値源泉を喪失させないためにも、後継者の確保はもちろん、後継者の育成や資産の引継ぎ等、中長期にわたる事業承継の準備に、早期から計画的に取り組むことが求められます。一方、後継者不在の場合、経営者の子ども以外への事業承継や事業売却(M&A)も含めて検討するケースも増えてきています。本研修では、 2014年度版中小企業白書第3章「事業承継・廃業(次世代へのバトンタッチ)」を読み、中小企業の事業承継の現状と課題を理解します。

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事業承継支援における中小企業診断士と投資育成会社との連携

2015-10-26

事業承継支援における中小企業診断士と投資育成会社との連携

中小企業経営者の事業承継を成功させるためには、社長という地位の「経営承継」と、自社株式という財産の「株式承継」の両面を同時に考える必要があります。そのため、経営承継の専門家である中小企業診断士は、積極的に自らお客様へ提案するとともに、株式承継の専門家である公認会計士との連携を行わなければなりません。

株式承継の手段としては、「中小企業経営承継円滑化法に基づく納税猶予制度」の適用が最も効果的です。
また、この制度を適用しない場合には、投資育成会社への増資が有効な手段となります。
中小企業診断士として、株式承継対策の必要性をお客様に提案し、他の専門家との差別化を図っていかなければなりません。

本セミナーでは、まず小黒会長から事業承継支援業務の社会的なニーズの大きさ、それに対する中小企業診断士の役割をわかりやすく解説します。次に、「事業承継における投資育成会社の活用法」というテーマで、具体的手法を、事例を交えて東京中小企業投資育成㈱の公認会計士からご講演いただきます。
さらに、事業承継税制(中小企業経営承継円滑化法に基づく納税猶予制度)の適用と、投資育成会社を併用する実践的な活用方法について、事業承継コンサルティング㈱の公認会計士から説明します。
中小企業診断士による事業承継支援業務の全体像を明らかにします。

中小企業診断士による事業承継支援は、東京都中小企業診断士協会の小黒会長が強力に後押しする取り組みであり、本セミナーは、事業承継支援に取り組もうとする中小企業診断士の方々にとって極めて有用な内容です。ぜひご参加ください。

【日 時】 2015年12月16日(水)13:30~16:30(受付開始13:00)
【会 場】 東京中小企業投資育成㈱ 大ホール
  (東京都渋谷区渋谷3-29-22)

【プログラム】
(1)「事業承継支援における中小企業診断士の役割」
講師:小黒光司(東京都中小企業診断士協会会長、中小企業診断士)
内容:事業承継支援に対する社会的なニーズの大きさ、それに対する中小企業診断士が果たすべき役割をご説明いただきます。

(2)「事業承継における投資育成会社の活用法」
講師:中野威人(東京中小企業投資育成㈱、公認会計士)
内容:経営権を確保しつつ事業承継を進める具体的手法を、事例を交えてご説明いただきます。

(3)「経営承継円滑化法に基づく納税猶予制度の活用法」
講師:岸田康雄(日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」専門研究委員、事業承継コンサルティング㈱、公認会計士)
内容:事業承継税制(中小企業経営承継円滑化法に基づく自社株式に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)の適用方法と、投資育成会社を併用する実践的な活用法をご説明いただきます。

【対 象】中小企業経営者、中小企業支援機関、中小企業診断士等
【参加費】3,000円

申込方法:東京都中小企業診断士協会のWebサイトを御参照ください。
http://www.t-smeca.com/

11/10(火)金融財務研究会「M&Aセミナー」

2015-10-11

非上場会社を対象としたM&A、
条件交渉、株式評価、取引スキーム
日時:平成27年11月10日(火)
午後1時00分~午後4時30分
会場:金融財務研究会本社 グリンヒルビル セミナールーム
 (東京都中央区日本橋茅場町1-10-8)
受講費:37,900円(消費税、参考資料を含む)
お二人目から32,000円、
書籍ご持参の方は2,200円引き
日本M&AセンターなどM&A仲介業者の業績が急拡大しているように、昨今、中小企業の事業承継に伴うM&Aに急増しています。

非上場会社のM&Aは、大企業による子会社売却とは異なり、売り手が個人オーナーとなるため、個人株主特有の論点を考慮しなければなりません。すなわち、非上場会社特有のM&Aプロセスや上場会社とは異なる株式評価など特有の論点が存在します。例えば、企業グループ内組織再編を目的とするM&Aにおいて考慮すべき税務上の株価(所得税法上の時価、法人税法上の時価)についての検討が必要となる局面があるため、DCF法やマルチプル法だけ理解していればよいというわけではありません。

そこで、本セミナーでは、非上場会社を対象としたM&Aについて、その特有の論点を整理のうえ、実務手続の進め方(M&Aプロセス)、非上場株式の評価、条件交渉の進め方、取引スキームの立案方法や実務上の留意点を、具体例を交えて解説します。

非上場会社を買収しようとする上場企業のM&A担当者、M&Aアドバイザリー業務を収益チャンスと捉える金融機関の営業担当者や経営コンサルタントの方々にとって極めて有益な内容です。経営者の高齢化による事業承継案件が増加する経営環境を考慮しますと、【買い手:上場企業→売り手:個人オーナー、対象:非上場会社】のM&A実務を習得することは不可欠と言えるでしょう。

1. 非上場会社のM&Aプロセス
1. 個人オーナーの意思決定と売却準備
2. 入札方式と相対取引の対応方法
3. 情報開示と意向表明書の提出
4. 株式譲渡契約書における条件交渉のポイント
(ア) 表明保証、誓約事項及びクロージングの前提条件と、
解除や補償との関係
(イ) デュー・ディリジェンスで瑕疵が発見された場合の条件交渉
5. M&Aを通じた経営承継
2. 非上場会社の株式評価
1. 非上場会社の価値とは何か、どのように評価すべきか
2. M&A株価の評価方法(DCF法、類似上場企業比較法)
3. 税務上の株価の算定方法(所得税法、法人税法の時価)
3. 非上場会社の取引スキーム

1. 売り手が個人オーナーによる株式売却
2. 第三者割当増資と支配権移転と、発行会社による
自社株買取り
3. M&A前の役員退職金支払い
4. 従業員による承継(MBO)
5. 組織再編(会社分割による不動産切離し)を伴うM&A
6. 経営統合(合併、共同持株会社設立)を目的とするM&A
~質疑応答~ 

事業承継スキルアップ講座「事業承継の事例紹介」

2015-10-01

事業承継スキルアップ講座にて「事業承継の事例紹介」をテーマとする講義を行いました。
動画を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。





親族内の事業承継は、親子関係の問題と密接に関わっています。親子の関係が悪ければ、事業価値源泉の承継がうまくいかず、最悪の場合、業績が悪化してしまう場合もあるのです。今回は中小企業診断士の渋川氏がご自身の家業の事業承継に取り組まれ、波乱万丈な人生を送られた実体験を語っていただきました。これから中小企業のM&Aと事業承継の支援がますます重要になることを理解していただけると思います。

事業承継スキルアップ講座「事業承継コンサルタントの営業活動」

2015-10-01

事業承継スキルアップ講座にて「事業承継コンサルタントの営業活動」をテーマとする講義を行いました。
動画を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。





事業承継の必要性は高まってきているのですが、その支援・アドバイスに対する潜在的なニーズを私達コンサルタントが掘り起こすことができていません。公的機関や金融機関が対応できない事業承継ニーズを中小企業診断士が見つけ、それを対応できるような体制を構築していきたいと考えています。これから中小企業のM&Aと事業承継の支援に取り組んでまいります。

事業承継の必要性と事業承継対策の概要

2015-09-21

1.なぜ事業承継の準備が必要なのか

今後も進む高齢社会の下で、中小企業の経営者の平均年齢は60歳(図表1)と、特に年々高齢化が進む資本金5,000万円未満の企業の経営者が平均を押し上げ、30年前に比べて約8歳上昇しています。

図表1:資本金規模別の会社代表者平均年齢の推移

中小企業の経営者が高齢化する一方で、後継者の確保が益々困難になってきており、中小企業の廃業が年間29万社あるなかで、後継者不在を理由とする廃業は7万社に上っています。

主な事業承継の形態としては、同族への承継、内部昇格、外部からの招聘、及びM&Aが挙げられます。日本では、中小企業の多くが同族会社とされており、2003年の調査では20年以上前は親族内承継が8割を占めていました。

図表2:先代経営者との関係の変化

しかしながら調査時点では、その他の親族を含めても親族内承継は約6割に減少しており(図表2)、自分の子の意に反して、親族内の後継者確保は年々困難になってきているといえます。

多くの中小企業では、オーナー社長が自社株式の大半や事業用資産を保有し、強いリーダーシップを発揮しながら会社を経営しています。そのような経営状態の中、準備が不十分な状態でいざ事業承継となった場合には、親族間の相続問題の発生や、取引先、金融機関、幹部社員や従業員などのステークホルダーとの信頼関係ができていない、経営ノウハウなどが後継者へ十分に伝わっていない、あるいは相続税等の負担・自社株式・事業用資産の取得等に必要な資金が用意できないなど、様々な問題が生じて事業の継続を断念せざるを得ない事態も生じかねません。

中小企業は、社長個人の信用力に因るところが大きく、高い技術力や優れたサービスに基づく競争力があるにも係わらず、スムーズな事業承継ができずに廃業するケースが多く見られます。

近年は積極的なM&Aによる会社の売却も選択肢の一つとして考えられるようになってきました。親族内承継、M&Aのいずれにせよ、大切な会社の将来を見据え、円滑な事業承継のための様々な準備を計画的に行っていく必要があります。

2.何を事業承継するのか

では何を誰に、どのように承継していけば良いのでしょうか。事業承継は、現経営者から後継者へ、企業が培ってきた様々な財産を引き継ぐことによって事業のバトンタッチを行うことです。事業承継は、「経営」の承継と「財産(特に株式)」の承継の2つに大別されます。「経営」の承継では、事業を継続するために必要な業務知識や経験、人脈、リーダーシップなどの経営ノウハウに加え、現経営者の経営に対する想いや信条、価値観などに基づいた経営理念という無形の財産を伝えていくことが大切です。「経営」の継承は、単に後継者を決めることに留まらず、経営者としての資質、能力、マインドなどを承継することが目的となります。

一方「財産」の継承は経営権、支配権の確保を目的としており、自社株式や不動産などの事業用資産の承継が主となります。多くの中小企業では、オーナーの個人資産が少なからず投入されていることが多く、経営者による大半の自社株式所有や土地などの個人資産を事業の用に供しているなど、企業の所有権と経営権の分離が困難なケースが多く見受けられます。

そしてこのことが、親族間の遺産分割の問題を顕在化させる大きな要因となります。親族の一人を後継者とした場合、他の相続人の権利によって相当程度の財産が分散してしまう可能性があり、後継者以外への自社株式や土地などの財産の分散を防ぐためには、多額の現金などを用意し、代わりに相続させることが必要となります。

また相続人間の争いが発生せずに後継者一人が承継した場合でも、多額の相続税が課されることも考えられます。更に、経営者が金融機関と締結している個人保証や担保提供は、後継者が事業承継を考えるに当たって大きな負担になることが多く、大きなリスクを承知で引き受けるに値する動機付けと経営へのコミットが必要となってきます。

このように、スムーズな事業承継を行うためには、後継者の育成に早期から計画的に取り組むことと、多額の資金調達が必要となる自社株式や事業用資産の買い取りや相続税の納税資金などのために事前に必要な資金を確保することなどが重要となります。

3.後継者の経営支配権の維持・確立

承継後の経営を安定させ、迅速な意思決定を可能とするためには、後継者へ自社株式を集中させること、及び不動産等の事業用資産を自由に利用・処分できることが重要となります(図1)。

図1自社株式の集中は、議決権の相当の割合(株主総会で経営の重要事項を決議できる3分の2以上)を保有することであり、これは経営の安定性を確保するためにも重要となります。不動産等の事業用資産(例えば、オーナー経営者が個人保有する土地を同族会社へ賃貸しているケースなど)は、その大半が経営者個人による所有となっており、経営権と所有権が一致しているケースが多くなっています。そのため、事業用資産が引き続き事業の用に供される場合には、親族間の遺産分割によって資産を分散させないよう対策が求められます。

また、事業承継には相続税対策も極めて重要な課題となってきます。スムーズな承継によって後継者が安定して経営できるよう、事業と経営支配権を維持した上でどのように節税をするかという視点も欠かすことができません。

これらを踏まえ、かつ後継者以外の相続人への配慮を持って円滑な承継を行うため、親族内承継の場合について3つの視点から考えてみます。

(1)生前贈与、遺言

生前贈与は、経営者の生存中に権利の移転が実現し、自社株式を譲り受けた後継者の地位が安定するため、非常に有効な方法と考えられます。しかしながら、自社株式や事業用資産の後継者への集中は、民法上他の相続人の権利によって制限を受けることとなります。

相続人が複数の場合、他の相続人の遺留分(※)を侵害する原因となって相続人間の争いを引き起こし、事業用の財産の分散によって事業承継に大きなマイナス要因となる可能性があります。そのため、財産の分割方針を決定した上で計画的にすすめていくことが必要となります。
※ 兄弟姉妹以外の相続人に対して、最低限度の資産継承を保障する制度

一方、遺言は法定相続に優先するため、遺留分に留意すれば相続争いや遺産分割協議を避け、自社株式や事業用資産を後継者へ集中させることが可能です。しかし、遺言はいつでも撤回可能なため、生前贈与と比較して後継者の地位が不安定となる可能性もあります。

また、税制面では、それぞれの状況に応じて各種制度の税負担や適用要件を比較し選択することとなります。相続人に貢献に見合った財産を与える場合は、贈与や遺言ではなく会社の報酬として与えることも有効な方法です。これは贈与に該当せず、他の相続人の遺留分を侵害するという事態も発生しないためです。

(2)会社や後継者による自社株式の買取り

事業承継時点において役員や従業員などに自社株式が分散している場合、可能な限り買取りを実施して株式を集約させる場合があります。後継者の経営支配権を確保するためであり、将来的に当該株主と会社との関係が希薄化していき、経営に何らかの障害が生じる可能性を未然に防ぐことが期待できます。

また、現経営者には協力的だった株主が後継者に交代した以後は非協力的となり、経営の意思決定がスムーズにいかなくなることも考えられます。この場合、後継者の持株比率を高める必要がありますが、後継者個人または会社が株主と交渉して自社株式を買取る方法と、会社が新株を発行して後継者にのみ割り当てる方法があります。経営支配権を確実なものとするためには、後継者個人による買取りがより望ましいといえますが、多額の株式買取り資金の工面が困難な場合などは、会社が買取ることとなります。

(3)会社法の活用

株式の集中による経営支配権の確保も重要ですが、現在の株式の分散を阻止する措置を講じておくことも同様に重要となります。具体的には以下のとおりです。

・株式の譲渡制限を設ける
相続人に対する売り渡し請求を行う
・種類株式の活用、例えば、議決権制限株式(※1)、拒否権付株式(※2)の発行

※1 議決権制限株式を活用する場合、議決権のある株式を後継者に割り当てる一方で、議決権が制限される株式を後継者以外の相続人に割り当てることによって、後継者への経営権の集中を図ります。

※2 拒否権付株式を活用する場合、自社株式の大半を後継者に譲渡することで後継者に議決権が集中しますが、経営に不安が残るため、けん制する余地を残したい場合などに、先代経営者が拒否権付株式を所有します。強い効力を持つ株式のため、後継者以外に渡らぬよう遺言で後継者に相続させるなどの配慮が必要となります。

これらは親族内継承の視点となりますが、現状は約4割の中小企業が役員や従業員など親族外から後継者を選出しており、オーナー社長に親族の後継者がいない場合などは社内関係者(役員や従業員)から後継者候補を探すことがその典型といえます。この場合、後継者による株式取得資金が不足するケースや、金融機関からの借入に対する現経営者の個人保証の取り扱いなどの課題が見受けられます。

金融機関は、現経営者の個人資産だけでなく経営力も評価して融資を行うため、経営者が交替したからと言って連帯保証が解除される訳ではなく、現経営者による個人保証に後継者を加えるよう求められることが通常です。そのため債務の圧縮を図ることが重要となりますが、個人保証を完全に解除することは困難といえます。金融機関との交渉を根強く継続することに加え、後継者の負担に見合った報酬を確保するなどの配慮が必要とされます。

このほか、後継者の能力や事業の将来性を担保とし、金融機関からの融資や投資会社からの出資を受ける、あるいは事業承継する会社の経営陣が株式を取得して経営権を取得するMBO(マネジメント・バイ・アウト)などの方法もあります。

後継者が見つからない場合などは、会社そのものを第三者に売却するM&Aも選択肢の一つです。

 

「従業員への事業承継と経営承継円滑化法セミナー」

2015-09-20

代表の岸田康雄が、東京都中小企業振興公社にて「従業員への事業承継と経営承継円滑化法セミナー」のセミナー講師を担当します。

公社チラシ

平成27年11月14日(水)14:00-16:30、東京都中小企業振興公社3階会議室にて。対象は、都内中小企業で事業承継を考えている現経営者及び後継者の方々

「遺言・相続手続・相続税」まるわかりガイドを1社につき1冊プレゼント!定員は100名で先着順です!

事業承継スキルアップ講座「株式承継と事業承継税制」

2015-08-31

事業承継スキルアップ講座にて「株式承継と事業承継税制」をテーマとする講義を行いました。
動画を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。





この事業承継税制は、親族外承継においても適用することができます。M&Aと絡めることは難しいですが、役員・従業員承継において活用することが可能でしょう。M&Aと異なりオーナーには現金対価が1円も入ってきませんが、会社売却から利益を望まない企業オーナーの新しい選択肢となるはずです。

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了(経営学及び会計学専攻)
税理士、公認会計士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員

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